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衛生委員会の活性化

現在 西友、日本マクドナルド、ロフト等嘱託産業医 平野井労働衛生コンサルタント事務所代表
㈱メディカル・マジック・ジャパン代表取締役、マジシャン 平野井 啓一

このコラムを読まれている方の中には衛生委員会の運営に関わっている方も多いと思います。私も嘱託産業医として様々な企業に訪問しますが、 衛生管理者の方から「委員会を盛り上げるためにはどうしたら良いですか?」という質問をよく受けます。確かに司会者が定例の報告事項を伝え、 委員の発言もそれほどなく、あっさりと終わってしまっている委員会も少なくありません。

何か会社の利益に直結する会議でもありませんし、 法律で決まっているから仕方なくやっている感が否めないのも致し方ないと思います。しかし、本来衛生委員会は事業場における労働衛生の進め方を 話し合う重要な時間です。本年12月より実施されるストレスチェック制度に関しても、厚労省は衛生委員会で十分に話し合うように指導しています。

また参加している委員の工数を使い、人件費が発生している事を考えると、ただ惰性で行うのはもったいないと思います。何かを決めたり、 その決定事項やそこで知った新しい知見を職場に広く伝えたりすることが委員の役割です。そのためには、参加者に興味を持ってもらえるような試みが 必要と考えます。今回は筆者が委員会で実際に行い、効果があった衛生講話実践例をご紹介いたします。

<高血圧>
 労働衛生分野では労災に結びつく可能性がある重要な疾患です。しかし自覚症状がほとんどなく、特に若い方には興味をもつのが難しい分野です。 そこで、現場で実際に血圧を測定したら面白いのではないか?と考え、小型の携帯血圧計を委員会に持参し、その場で委員の方の測定を行いました。

また、運動やストレスが測定結果に影響を与えることを説明したのち、そのような条件下で再度測定を行いました。(例えば普通に測定したのち、 スクワットを30回やってもらってから再検、または異性の委員にずっと見つめてもらいながら測定する、など)結果、血圧は上昇し、他の委員方に 笑顔が生まれます。その後、健診時に焦って走ってきてからすぐ測定してはいけないことや、緊張で普段は低いが健診時のみ高くなる白衣高血圧の説明に つなげました。

<熱中症>
 本年は昨年にくらべ大変気温が高く、対策に翻弄された方も多いと思います。厚労省も労災発生予防に力を入れており、メディアも取り上げています。 本コラムの執筆者の一人である山田洋太医師も、先日のTV番組で予防の重要性について分かりやすく解説していました。今や「水分と塩分」をとることが 予防で最も大事であることは周知の事実となりつつあります。

そこで知識を頭で得るだけではなく、感覚からも入力してもらいたいと考え、 委員会で経口補水液の試飲会を行いました。オフィスで就労している委員の中に脱水状態の方はほとんどおらず、「しょっぱい!」という意見が多かったです。 しかし、外回りから帰ってきた委員の方は「美味しい!」と言って周りを驚かせたり、その場で様々な意見がでたりして、とても盛り上がりました。

<メンタルヘルス>
 前述のストレスチェック制度も含め、今やどのような業種でもメンタルヘルス対策をしなくてはならない時代となっています。セルフケア、ラインケア、 職場復帰プログラム、心の健康づくり計画等、やらなければならない事が山積しています。

しかし、形や数値で表すことが難しい分野なので、 言葉で分かったつもりになってもなかなか実践に結びつきにくいのが現状です。例えば、ラインケアの中でメンタル不調が疑われる部下に、 やってはならないことがあります。叱咤激励しない、気持ちや根性の問題にしない等。これらは文章で読むと数分で終わってしまい (本当に困っている人以外は)、あまり記憶に残りません。

そこで、やってはいけない事をすべて盛り込んだ寸劇の台本を作り、 委員の方に実際に演じてもらいました。具体的には、要領がよくない部下(役名:越智 込男(オチ コミオ))がミスをし、 鬼のような熱血上司(役名:木使 梨彦(キヅカイ ナシヒコ))に責められるという内容です。役者は(その人の人格とは関係なく)その役にもっとも 適した方にやっていただきました。「とても面白かった!」「良く分かった」という感想の他に「自分が同じような事をやっていて反省した」などの感想も いただきました。

 
今回のお話は労働衛生の本筋からは少し逸れる部分もあったかもしれません。しかし、前述したように人件費も時間もかかっている委員会です。 楽しく意味のある時間にしましょう。そのためには言葉での説明だけでなく、感覚で伝えることも大事だということをお話させていただきました。 「やらなくてはならない委員会」から「参加して良かった委員会」へ転換し、活性化へ繋がっていく一助となれば幸いです。
 
  ※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

この記事の講師

平野井先生

平野井 啓一

平成16年:秋田大学医学部医学科卒業後、宮城厚生協会
     坂総合病院で初期研修終了

現 在 :東京警察病院にて初期臨床研修を修了、
     東京医科大学病院にて研修,
     西友、日本マクドナルド、ロフト等嘱託産業医

㈱メディカル・マジック・ジャパン代表取締役、
マジシャン
楽しい労働衛生活動をモットーにマジック等笑いも取り入れた産業医活動を実践している。

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