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産業保健を楽しく実のあるものにするコツ

産業医
林 幹浩

人事・労務のお仕事はたいへんです。問題への対応、複雑な法規の理解、ちゃんとやれて当たり前と思われがちな風土、それでいて企業業績に貢献している実感がなかなか湧きにくい…
産業保健に携わる者の一人として人事・労務のご担当の方と接するとき、ご苦労がしのばれることが多々あります。

 

せめて、産業保健を楽しく実のあるものにすることに貢献できたらと、いつも産業医活動ではそう考えているのですが、そのためのちょっとしたコツのお話を今日はさせていただこうかと思います。

産業保健を(いや、ひょっとしたら企業活動すべてでかもしれませんが)楽しく実のあるものにするには、3つのCを押さえておく、ということがあります。仕事にメリハリをつけ、何のための仕事かをはっきりさせるとともに、性格の違う3つに取り組むことで仕事そのものの変化を楽しむ。そのためのフレームワークとでも言いましょうか。

困ったり、つらくなったら、「3つのCはちゃんと押さえてある」あるいは「3つのCのうちのこれをやろう」といった感じで臨むと、よい結果になってくるかもしれません。

最初のCは、言わずもがな(?)のComplianceです。
産業保健は「安衛法でこうなっているからやらなきゃならない」「会社としての法的責任がある」といった文脈で行われているところがあります。そもそも産業医などというものは『法律で置くことになっているから要るのであって、本当は要らない』といった暴言(?)を言う人もいるくらいです(笑)。

このことは、元気の出ない話と思われるかもしれませんが、実はさにあらず。この、Complianceのためにやっているのだということを明確に意識すると、おのずと「どこまでやるか?」「何を確保しておけばよいか?」という目線でものごとが整理できます。

そんなの当たり前じゃん、と思われるかもしれませんが、現場にいますと、意外と不必要なことに手間ひまかけていたり、逆に法的なリスクのある事態が放置されていたりすることがままあります。産業医たるもの、産業保健におけるComplianceのおかげで仕事をさせていただいているのですから(笑)、会社の誰よりもこの整理について精通しているべきであり、「その仕事は必ずしもしなくてもいいですよ、ここだけは押さえておきましょうね」というアドバイスができるのが当然です(そうでない産業医がいたら交代させましょう(笑))。


2番目はContingencyです。
人にからむ仕事には必ず「不測の事態」「非日常なできごと」があり、その場合にどうするかが問われます。そういう時の行動は、企業の中でのその人の評価にも直結するだけに、組織人としては押さえておきたいところです。つまり、「こういうことが起きたときはどうするか?」というシミュレーションを、産業保健スタッフとしておくのです。
そんなん知らんわい、とのたまう産業医がいたらこれも代えてください(笑)。困ったことが起こった時に対応できる仕組みとして、産業保健体制をつくることが大切です。


3番目のCは、Campaignです。
これは、守りでなく攻めの活動ですね。自分たちの活動のおかげで社員の厚生が向上した。みんなが元気になった。そう言われればいいなと思いますよね。
では何をするか?講演会や啓蒙活動もよいのですが、私のお勧めは「数値目標」です。これは、目標の選び方にちょっとしたノウハウがあるのですが、スタッフの取り組みで実現可能な社内厚生の数値目標を設定して戦略的に取り組むのです。小さなことでもいいので、「結果を出せた」と言える、数字で示せるものを工夫します。部門全体(できれば会社全体)に関係するマクロなものがよいですね。

産業医の中に、自分は医者だから個人が対象でマクロはやらないといった驚くべき考えを持つ人がいますが、とんでもないことですね。データヘルスなどと今風なことを言わなくても、本来産業保健はこうしたことに積極的に取り組むことこそ本質ではないかと思います。

あえてあまり具体的なお話にせずに書いてまいりました。それは、組織の特性によって3つのCがさまざまな形をとるからです。
プロフェッショナルの産業医とは、その組織に見合った3つのCを、皆さんが楽しんで取り組めるようにできる人だと思っています。

この記事の講師

林 幹浩

林 幹浩

国の産業政策、ベンチャー企業経営、臨床医療に携わる。
現在、総合診療医として現場に立ちつつ、IT企業を含む数社の嘱託産業医を務める。

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