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人と言葉が新年を決める!

産業医科大学 産業衛生教授
浜口 伝博

新年明けましておめでとうございます!

と、会う人ごとにあいさつすると、その都度清新な気分になるし、少しばかり荘厳で何かが動き出している気配も感じます。それは昨年とは縁を切って、全く新しい日々のおとずれにワクワク感を感じたり、モードが変わって心の高揚感が付け加わるということなのかもしれません。どうしてなのかはわかりませんが、自分で発した新年の常套句は、自分自身も変えていく効果があるようです。

一方、人は人に影響されます。笑っている人といっしょにいると思わず笑いが出てくるし、つまらなそうな人といっしょにいるとやっぱり自分もつまらなくなる。職場でも、堂々として信頼感のある上司がいれば、部下たちも安心して仕事ができますが、いつもカリカリしているような上司だと、職場全体もカリカリして息苦しくなってきます。こんな風景は日常的にどこでもありますので、「ほとんど法則」と言ってもいいくらいはずれのない現象と言えます。

このような、他人の感情が他者にも共有されてしまうような現象を「情動伝染」というのですが、感情には伝染するという側面があるわけで、これは一種の感染症ともいえますね。「もらい泣き」などはその典型例です。

最近分かった面白いことは、この「情動伝染」、顔やしぐさなどの表情があるからだと考えられていましたが、じつは、テキスト(文字)交換だけでも同様の相互作用のあることがわかりました(Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jul 22;111(29):10779.)。

調査によると、ポジティブ(前向き)な言葉をよく使うと相手もポジティブになり、その逆もまた成立するということのようです。そういう意味ではネット上のコミュニケーション(SNS)に、参加するのはいいとしても、互いのテキスト表現には適度な節度が重要だとわかります。

別の調査には、ポジティブな言葉(感謝、希望、勇気など)を多用する人は、そうでない人と比べて寿命が9.4年も長いという報告もありますので(Ed Diener, Micaela Y. Chan “Happy People Live Longer: Subjective Well-Being)、日ごろの言葉使いをないがしろにしてはいけません。

さて、これらから言えることは、他人の情動は自分に反映されるので、自分の情動を管理したいのであればやはり「相手を選ぶ」必要があるということ。また自分で発する言葉は自分自身を変えていくので「言葉を選ぶ」必要があるということです。自分を高めて自分を成長させるための「相手を選ぶ」、自分自身で自分を律していくための「言葉を選ぶ」ことが、今年の私たちの1年を決定してしまうといっても言い過ぎではないと思います。

そういえば、その人の“人となり”を判断するには、周囲の友人たちがどんな人たちなのか、そして、その人と友人たちがどんな言葉使い(ネガティブワードなのかポジティブワードなのか)をしているのかをみるだけでほぼ正しい判断にたどり着くので、すでに私たちは直観として活用しています。

さあ、新年に当たり、気分を変えて、結果を変えましょう!
「気分」が変われば「行動」が変わるので、おのずと「結果」も変わってくる、という当たり前の法則です。じつは、「気分」は使う言葉を選ぶことで簡単に変えることができます。
自分を励ます言葉、他人を大切にする言葉、人生を前向きにする言葉、新年に誓う言葉、をもう一度こころのなかで繰り返してみましょう。きっと私たちの目の前の世界もその言葉通りになっていくはずです。

 

この記事の講師

浜口 伝博

浜口 伝博

産業医科大学 産業衛生教授

(ファームアンドブレイン有限会社 代表取締役社長)

産業医科大学医学部卒。(株)東芝、日本IBM(株)にて専属産業医を勤める。現在、ファームアンドブレイン社を立ち上げ、産業医・産業保健コンサルティングを展開。慶應義塾大学医学部講師 (非常勤)、愛媛大学医学部講師(非常勤)を兼任。

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