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メンタルヘルスは現場のマネジメントから

株式会社i CARE代表取締役
東京ベイ・浦安市川医療センター経営企画室室長
山田 洋太

 今回は、企業のメンタルヘルスで見られる間違いについて説明したいと思います。

 皆様の周りにもいると思いますが、メンタルヘルスというと人事や産業医、保健師、カウンセラーに任せるしかないって思われる方、特にマネジャー職でいませんか?
 確かに、疾病の度合いから就業がどの程度出来るのかを考えることこそが産業医の役割でもありますので、正しい部分もあります。

しかし、メンタルヘルスには2つ考えなければならないことがあります。
1つ目は「本人の特性(性格・スキル等)」、
2つ目が「職場の特性(マネジメント)」です。

うつ病になるのは「個人の問題」ということをよく聞きます。これもまた一部正しいのです。最近では「新型うつ病」といった名前で呼ばれてしまうように、社会との関わりあいが未熟であるケースも非常に多いからです。この未熟性が職場環境で悪さを働き、“一緒に働きたくない社員(困った社員)”となってしまうのです。

しかしながら、このようなケースであっても未熟な社員を採用したのは会社であり、彼らにも同時にマネジメントする必要が出てくるわけです。そうはいっても配置転換や業務量、内容も十分に考えたが、やはりマッチしなかったということもあると思います。その場合には、残念ながら御縁がなかったと考えることが会社にとっても本人にとっても良いでしょう。

一方、これよりも多く認められるのが上司側の問題です。メンタルヘルスの多くは「上司のマネジメントの不十分さ」によって発生しています。上司が部下をマネジメントしていないのです。

釈迦に説法となりますが、上司(マネージャー)の役割とは、チームに与えられた成果を達成させること、そのためにチームパフォーマンスを最大化することです。そのために必要な情報を獲得して、部下に配り、さらに進捗を管理してチーム全員を同じ方向性に導くことです。これが出来ていない上司が多いのです。

その理由としては、上司自身がプレイングマネジャーであること、マネジャーとは何をするのかがわからないこと、昔ながらの背中を見てついてこい派であること、パワハラと言われるのが怖い・優しすぎる上司であること、様々だろうと推察されます。上司の持っている情報と部下の持っている情報は全く質も量も異なります。そのような暗闇の中で部下は命じられた仕事をやっているという認識の中で、上司は部下に常に獲得してきた情報を加工して伝達する必要があります。誰でも暗闇の中で、どこがゴールかわからないまま走っていたら簡単に疲れてしまうのではないでしょうか。

 

メンタルヘルスを考える上で重要なことは、「職場としてマネジメントが機能していたか」ということです。メンタルヘルスは、産業衛生の問題ではなく、マネジメント(現場)の問題なのだということです。

平成24年の精神障害による労災認定支給件数は過去最高の475件となりました。そのうち原因を見ると上司に関係するものが40件(8.4%)、仕事の量や質に関係するもの108件(22.7%)となります。いまいちど、メンタルヘルス対策を産業衛生体制から考えるのではなく、管理職・マネジャー・リーダー教育という観点から見直されてはいかがでしょうか?そうすることで、解決されることも多いでしょう。

この記事の講師

山田 洋太

山田 洋太

金沢大学医学部医学科卒業 
2005年 沖縄県立中部病院研修  
2008年 離島医療(久米島)に従事  
2012年3月 慶應義塾大学大学院経営管理研究科
(MBA)修了
 

 大学院と並行して心療内科を学び、一般内科とともに現場での診療も継続中。
現在、株式会社i CARE代表取締役、東京ベイ・浦安市川医療センター経営企画室室長。

 

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