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「-2023 謹賀新年-」

産業医科大学 産業衛生教授
浜口 伝博

みなさん、明けましておめでとうございます。

晴れ晴れと新年をお迎えのことと思います。

 

昨年のワールドカップでは、日本がドイツとスペインに勝利し世界を沸かせました。何しろランキングの格上国を2国連続して負かせたのですから、応援した私たちの喜びも格別でした。世界の8強こそ入れませんでしたが、サムライジャパンの強さは世界にインパクトを与えました。大いに歓喜しただけに、あの感動や興奮をそのまま新年まで持ち越したかった人も多かったことでしょう。感動はなぜ持ち越せないのでしょうか。

 

私たちの感動や興奮は脳のなかで起こっていますが、すべての感情は脳内にある化学物質で作られています。ちなみにワールドカップの感動や喜びは、ドーパミンという物質がまさに、脳内にドバーッと出て(笑)引き起こしています。この感情は幸せな気分の一つではあるのですが長続きはしません、瞬間的なのです。

ドーパミン以外に私たちに幸せを感じさせる脳内物質として、セロトニン、オキシトシン、ベータエンドルフィン、ギャバ、アドレナリン、ノルアドレナリンなどなどあるのですが、ここでは新年にあたりセロトニンとオキシトシンの紹介をしようと思います。

 

この2つは瞬間的な幸福ではなく、じわーっとそして長時間にわたり幸福を感じさせる物質です。
例えばセロトニンは体が感じる安心感や充実感の幸せをつくります。
「体調が良好で落ち着いている」「気分も穏やかで安心している」というリラックスと健康的な幸福感です。またオキシトシンは人とのつながり、「家族や友人に恵まれている」「人の温かみを感じる」「自分も周囲に貢献できている」と感じることのできる連帯感や信頼感を生じさせる物質です。

 

これらはドーパミンのような派手さはありませんが、生活や人生の基盤的な幸福感としていつも脳内で分泌してほしい物質です。大切なのはどういうふうにするとセロトニンやオキシトシンが毎日脳内に分泌されるのか、という問題です。

これはすでに科学的にわかっていて、解決策は、十分な睡眠、適度な運動、禁煙、節酒、体重管理、良好な家族関係、信頼できる友人の存在、職場の良質なコミュニケーション等です。どれも特別なものではなく、誰でも取り組めるものとなっています。そうと気づけば、幸せは遠くにあるものではなく、すぐ身近にあるものなんだと理解することができます。

 

もう一つ、幸せを感じるのは脳であるということに気づけば、脳を大切にすることがその前に重要だということにも気がつきます。

脳に一番悪いのは睡眠不足と多めの飲酒です。なかでも睡眠不足は脳にとっては非常事態なので、脳はこのストレス状態から早く逃れるために、必要以上に興奮し、怒りっぽくなり、血圧も上げて、相手を打ち負かすための戦闘モードに入ってしまいます。

徹夜をすれば落ち着いて仕事ができないのもこのせいです。ですので、できるビジネスマンこそ睡眠を確保しなければいけません。睡眠時間を確保して、それから逆算して仕事の段取りを決める、というくらいの優先順位にしないと体調の安定はとれませんし、仕事の品質も上がらず、もちろん幸福感もやってきません。

睡眠、節酒、運動、良好な人間関係は、良質なビジネスと幸せをもたらす重要な因子なのです。今年も健康的でバランスのいい1年にしていきましょう。

 

この記事の講師

浜口 伝博

浜口 伝博

産業医科大学 産業衛生教授

(ファームアンドブレイン有限会社 代表取締役社長)

産業医科大学医学部卒。(株)東芝、日本IBM(株)にて専属産業医を勤める。現在、ファームアンドブレイン社を立ち上げ、産業医・産業保健コンサルティングを展開。慶應義塾大学医学部講師 (非常勤)、愛媛大学医学部講師(非常勤)を兼任。

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