日本医師会認定産業医・日本内科学会認定医
松井 歩
■生活習慣病とは?
生活習慣病とは、食事、運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関わり、発症の原因となる疾患の総称です。以前は成人病と呼ばれていましたが、成人であっても生活習慣の改善により予防が可能で、成人でなくても発症の可能性があることから、生活習慣病と改称されました。日本人の死因トップ3であるがん、脳血管疾患、心疾患、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などはいずれも生活習慣病です。
■健康寿命とは?
健康寿命とは、WHOが2000年に提唱を始めた概念で、心身ともに健康で、介護などを必要とせず、日常生活に制限なく自立して生活できる期間のことです。
日本人の平均寿命と健康寿命の差が、男性で約9年、女性で約12年もあることが問題になっています。つまり、一生のうち「不健康な期間」が約10年もあるということです。
■生活習慣病予防のための良い生活習慣
① 適度な運動
普段から元気にからだを動かすことで、糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、足腰の痛み、うつ、認知症などになるリスクを下げることができます。厚生労働省の“健康づくりのための身体活動指針”では歩行以上の強度の身体活動を毎日60分、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分することを目標としています。コロナ禍で運動不足を自覚されている方も多いと思いますが、週末だけでも合計40分の有酸素運動ができれば生活習慣病予防の効果があることがわかっています。ソーシャルディスタンスを取りながらジョギングに取り組んでいただくことをお勧めします。
② バランスの取れた食事を規則的に
食事は主食、主菜、副菜を組み合わせてバランスよく、腹八分目をまもり、野菜多めのメニューにしましょう。生活習慣病予防の観点から必要な野菜の摂取量は1日350グラムです。日本人に足りない摂取量はあと100グラムといわれています。
また、ステイホームの影響で食事が不規則になっている方も多いかと思いますが、食事時間が不規則だと、空腹感から間食やジュースを摂りすぎることになりがちです。できるだけ規則正しく3食摂ることを意識しましょう。
③ 喫煙をしない
たばこの煙には、ニコチンやタールをはじめ、約200種類の有害物質、約70種類の発がん物質が含まれており、これらの物質が悪影響を及ぼし病気を引き起こします。喫煙はがんや慢性閉塞性肺疾患の発生リスクとなるばかりでなく、血糖上昇や動脈硬化促進によって脳梗塞や心筋梗塞といった生活習慣病のリスクになることがわかっています。
④ 飲酒は控えめに
アルコールの影響は肝臓だけでなく全身に及び、さまざまな健康障害をもたらします。
適度な飲酒量は、1日平均純アルコールで20グラム程度(ビール中びん1本、日本酒1合、チューハイ350ml、ウイスキーダブル1杯)です。節度ある飲酒を心がけましょう。
⑤ 十分な睡眠をとりましょう
個人差はあるものの、1日6〜8時間の睡眠をとりましょう。日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番です。睡眠不足や睡眠障害によってさまざまな生活習慣病が増悪するメカニズムが明らかになってきています。
コロナ禍で睡眠の質が悪化している方が増えています。
原因としては運動不足や生活リズムの乱れが挙げられます。毎朝同じ時間に起床して朝の太陽の光をたっぷり浴び、朝食を同じ時間に摂ることで生活リズムを立て直してみましょう。
また、運動不足が気になる方は週末の有酸素運動を習慣化したり、寝る前にストレッチなどの軽い運動に取り組むことで睡眠の質の改善が期待できます。
これらはどれも特別なことではありませんが、すべてを実行するのはなかなか難しいことでしょう。しかし、毎日の習慣の積み重ねが健康寿命にまで関係します。一度ご自分の生活習慣を見直してみませんか。
引用参考文献
1.厚生労働省.
平成28年簡易生命表の概況.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-15.pdf
2.厚生労働省.
令和2年版 厚生労働白書.
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/all.pdf
3.厚生労働省 スマートライフプロジェクト
4.厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
5.厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室 コミュニケーションの手引き
松井 歩
【略歴】
日本医師会認定産業医
日本内科学会認定医
腎臓専門医・透析専門医
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