とりずみ労働衛生コンサルタント事務所
鳥住 知安記
早いもので今年も3月。年度の締めくくりの月となりました。
4月の新入社員の受け入れや異動、組織変更などで、慌ただしく過ごされている方も多いのではないでしょうか。そんな忙しい時期だからこそ、ご自身の健康について改めて考えていただければと思います。
さて、年に一度の健康診断で全国的に最も有所見率が高い項目をご存じでしょうか?
答えは「脂質異常症」です。実に約3人に1人が該当すると言われています。治療を受けている方はもちろん、基準値をわずかに超えている方も少なくありません。
脂質異常症とは、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、または善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる状態を指します。このバランスが崩れることで動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などのリスクが高まります。
脂質異常症の原因としては、食べ過ぎ、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲みすぎ、ストレス、不健康な食事(脂っこいものや甘いもの)、遺伝などが関係しているといわれています。
近年の食生活の変化や運動不足により、日本でも脂質異常症の患者が増え続けています。 しかし、適切な生活習慣を心がけることで予防が可能です。今回は、脂質異常症予防のための「食事」と「運動」のポイントをご紹介します。
■食事で意識すべきポイント
脂質異常症予防のカギは、バランスの良い食事です。以下の点を意識しましょう。
LDLコレステロールが高くなる原因の一つが、飽和脂肪酸の摂りすぎです。
飽和脂肪酸は以下の食品に多く含まれています。
揚げ物やスナック菓子、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸もLDLコレステロールを増加させるため、摂取を控えめにしましょう。
また、食事中のコレステロール(主に鶏卵の黄身や魚卵)もLDLコレステロールを高くします。個人差が大きく、飽和脂肪酸と比べると、影響が小さいことが知られていますが、LDLコレステロールが高い人で、飽和脂肪酸やコレステロールを食べる量が非常に多い人は、その量を控えることで、比較的容易にLDLコレステロールを下げることができます。
これらは悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らす効果が期待できます。ただし、摂りすぎはエネルギー過剰につながるため、適量を心がけましょう。
野菜、果物、海藻、全粒穀物、豆類に豊富な食物繊維には、脂質の排出を促す効果があります。1日350g以上の野菜(非加熱状態で両手いっぱい程度)を目安に摂るようにしましょう。
野菜を摂る工夫として、以下を試してみてください。
脂質異常症に限らず、生活習慣病予防のためにも食物繊維を積極的に摂ることが大切です。
糖分や塩分の過剰摂取も脂質異常症に悪影響を与えることがあります。砂糖入りのコーヒーや紅茶、ジュースなどを日常的に摂取していないか、見直してみましょう。
■運動で改善するポイント
運動には、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やし、脂質バランスを整える効果があります。
有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど)は特に脂質異常症の改善に有効です。1日30分以上(週180分以上)を目標に、無理なく続けましょう。
また、筋力トレーニングも効果的です。スクワットや腕立て伏せなどの簡単な筋トレを週2回程度取り入れましょう。
■体験談
実際に生活習慣を改善し、健康診断3か月後の血液検査で脂質異常症の改善がみられたAさん。実際に下記のような取り組みをされたそうです。
毎日の小さな習慣が大きな変化につながります。
■毎日の選択が未来の健康をつくる
脂質異常症の予防には、長期的な生活習慣の改善が重要です。
再検査や要治療の指摘を受けた場合は、放置せずに医師に相談しましょう。今日からできることを一つずつ実践し、健康的な生活を目指していきましょう!
参考
•厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイ
•動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス