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その頭痛、脱水症状かも?汗をかく夏に知っておきたい正しい水分補給

日本医師会認定産業医
若林 佳奈

朝起きて、ご飯を食べる時間もなく、急いで出勤。会社に到着したら頭痛や倦怠感がひどく、市販の鎮痛薬を飲まないと仕事に集中できない!という経験したことないですか? その症状、もしかしたら脱水症状かもしれません。

今年の梅雨明けから各所で40℃以上の猛暑を記録し、暑い夏が到来しています。建築業、製造業、運送業で脱水症状・ひいては熱中症になることが多いと言われています。しかし、暑い夏は通勤時でも多量の汗をかき、適切な水分補給をしないと脱水になることがあります。

『汗をかく仕組み』について知り、適切な水分補給をしていただくことで、暑い夏を乗り越える身体作りをしていきましょう。

 

contents

1.私たちはなぜ汗をかくかについて

人は身体が熱を作り出す『産熱』と身体から熱を逃す『放熱』で体温を一定に保って生命を維持しています。体温が42℃以上になると、体のタンパク質を破壊し、意識がなくなり、生命維持ができなくなると言われています(※1)

そのため、体温が高くなりすぎないように、汗をかいて体温調整をしているのです。汗が蒸発する時の気化熱で体内の熱を逃すため、汗をかくことは体温を下げる最も効率的な方法と言われています。あまり知られていませんが、動物の中で汗をかいて体温調整をするのは人間だけとも言われています。

夏の炎天下を10分歩くと100mlの汗をかくと言われていますが、100mlの汗は体重70kgの人の体温を1度下げてくれます。逆に汗を全くかけない人は炎天下を20分歩いたら、体温が2度も上昇して高体温になってしまうんですね。

2.汗をかいた時に失われる成分について

脱水予防といえば、何を摂取すると良いと思いますか?大多数の人は『水分』や『塩分』とお答えになると思います。

人の汗は約99%が水分です。残りの1%は塩分やカリウムなど複数のミネラル等で構成されています。そのミネラルの濃度はケースバイケースで一定ではないと言われています。なぜなら、汗を作り出す汗腺には汗から塩分を再吸収する仕組みがあるのです。(※2)

発汗量が少なければ塩分を含むミネラルが再吸収されるので、汗をかいたときに身体から放出されるミネラルは極めて低くなります。一方、発汗量が多いときはミネラルの再吸収が追いつかないため、ミネラルを多く含む汗をかくのです。

サラサラした汗とベタベタした汗があるのは、この『塩分を含むミネラルの再吸収』の度合いの違いなんですね。

3.シーン別、身体から失われる水分量とは?


・座る 約4時間/約23℃で約200ml(※3)

・通勤 約1時間/約27℃で約200ml(※4)

・入浴 7〜10分/43℃で約400ml(※4)

・睡眠 8時間/29℃で約500ml

・サッカー約1.5時間/約26℃で約2000m(※5)

・ゴルフ1R 4.7時間/約1075g(※6)

・剣道     約1時間/約30.4℃ 2700g(※7)



これを見ると、スポーツだけではなく、何気ない日常の中でも身体から汗として水分・ミネラルが失われているのがわかります。特にベタベタの汗をかいているときは、大量に汗をかいている時証拠であり、水分だけではなく、ミネラルも十分に補給する必要があります。

4.体の水分はどこまで失われたら危険なの?

どんなシーンでも発汗によって身体の水分が失われると、体重が減少します。この状態が脱水です。体重の2%程度までの脱水が進むと、発汗量が抑制され体温上昇する、いわゆる重度の熱中症の状態になります。

体重の2%というのは日本の壮年期男性170cmの平均体重70kgで考えると、1.4L程度、日本の壮年期女性160cmの平均体重53kgで考えると1L程度です。

重症脱水症状にならないためにこまめの飲水が必要です。

5.喉の渇きがなくても、それは自分の脳に騙されているだけ?

たくさん汗をかいて喉が乾いた時、ミネラルや糖分を含まない水分だけのもので水分補給している方もいるかと思います。ただ、水分だけの補給では汗をかいたことによって失った量を十分に補給できない場合があります。

それは『自発的な脱水』として知られている現象です。人間の体はとても優秀で、体の体液の濃度を一定に保って生命を維持しています。ミネラルを失うほど汗をかいている時に水分だけを飲んでしまうと、体内のミネラルの濃度が薄まってしまい、ミネラルバランスを保とうと脳がそれ以上水分を取らないように指令を出すのです。

そのため、失われた水分量を補給できていなくても『喉の渇き』はなくなり飲水行動を止めてしまうのです。

また、水分を腸管から吸収するときはミネラルと糖と一緒に吸収しています。そのため、水分だけでは吸収が十分にできない場合があります。

参考文献

※1山蔭道明『体温のバイオロジー』 メディカル・サイエンス・インターナショナル,2005,p.4-5

※2職場における熱中症予防対策よりhttp://heatstroke.oshdb.jp/about/about04-02.htm

※3Tet al , Aviat Space Environ Med 2004

※4大塚製薬佐賀栄養製品研究所データ2000

※5 Maughan RJ et al, Int J Sport Nutr 2004

※6音本ら,滋賀県立大学研究紀要,1999

※7和久ら,体力科学,1991

6.体への吸収力が高いのはどんな飲み物?

また、早く吸収させたいときは冷たい飲料がお勧め。下に図を示しますが、冷たければ冷たいほど腸管からの吸収速度が速いことがわかります。



吸収速度の違いですが、体液の成分と同等ミネラル濃度だと、腸管からの吸収が速いことが知られています。そのため、多量に汗をかいている場合は経口補水液やスポーツドリンクのようなミネラルや糖分を適度に含んだ水分補給を行うことが大切です。

(ただし、スポーツドリンクは糖分を多く含んでいるので、基礎疾患のある方は医師や栄養士への相談は忘れずに!)

また、腸管からの水分の吸収量はおおよそ260ml/hであり、大量に汗をかくときはこまめな水分補給を心がけましょう。

 

暑い日が続いていますが、暑熱環境では通勤だけでもたくさん汗をかくと思います。脱水の症状としては、頭痛や倦怠感、眩暈など症状が出ることがあります。

正しい水分補給の方法を知り、暑い夏を乗り越える身体作りをしていきましょう。

この記事の講師

若林 佳奈


日本医師会認定産業医

日本内科学会認定医

公認心理師

レジリエコーチ

 


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