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家族性高コレステロール血症について

日本医師会認定産業医・日本循環器学会専門医
岩城 聡子

新型コロナウイルス感染症の流行を受けた緊急事態宣言による自粛生活で、運動不足だった方も多いかと思います。緊急事態宣言が解除され、段階的に日常が戻る中で、血糖やコレステロールなどの生活習慣病のことも改めて気になってくる時期でしょう。

今回は生活習慣病のなかでも高コレステロール血症を取り上げます。

食事や運動などの生活習慣の乱れを伴うことが多い高コレステロール血症ですが、遺伝による家族性高コレステロール血症という病気もあります。あまり耳にすることがない病気かと思いますので、家族性高コレステロール血症について説明します。

 

【診断】
家族性高コレステロール血症は、
①高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症
②早発性冠動脈疾患(若くして狭心症や心筋梗塞になること)
③腱・皮膚黄色腫(アキレス腱や皮膚が黄色く変化、または黄色くかつ盛り上がること)

を特徴とする遺伝性の病気です。遺伝形式によりヘテロ接合体とホモ接合体の大きく2種類に分類されます。ヘテロ接合体はホモ接合体より軽症です。採血の総コレステロール値で比較すると、ヘテロ接合体は、正常者の約2倍、ホモ接合体は約4倍の値を示す報告がありますが、ヘテロ接合体とホモ接合体の間はオーバーラップがあり、総コレステロール値だけでは区別が困難な場合があります。

診断は
①採血のLDLコレステロール180㎎/dl以上
②腱・皮膚黄色腫
③2親等以内の血族の家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴のうち、2つ以上の項目を満たすこと

遺伝子診断は必須ではありませんが、遺伝子に変異が確認されれば確定診断となります。診断基準にあてはまるかもしれないと思われた方は、類似疾患もあるため専門医にご相談ください。

 

【特徴】
コレステロールが高いことによる症状はありませんが、狭心症や心筋梗塞などになりやすいことが健康上の問題です。ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症の方でコレステロールを下げる治療を受けていないと、狭心症や心筋梗塞を起こす危険性が13倍高くなるという報告があります。そのため、早めに診断・治療を行うことが大切です。

 

【頻度】
ホモ接合体家族性高コレステロール血症は100万人に1人程度ですが、臨床症状は顕著であり見逃されにくいです。ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症は200-500人に1人程度と考えられ、日本では30万人以上の患者がいると推定されますが、診断率は低いと考えられています。また、家族性高コレステロール血症は稀な疾患ではなく、治療を受けている高LDLコレステロール血症患者の約8.5%を占めるとする報告があります。

 

【治療】
家族性高コレステロール血症の治療目標は、狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化による病気を起こしたことのない人はLDLコレステロール100㎎/dl未満。狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化による病気を起こしたことのある人のLDLコレステロール目標値は70㎎/dl未満です。

治療方法は、食事療法や運動療法、薬(飲み薬、点滴)の治療、LDL吸着療法(透析と同様の手順で血液からLDLコレステロールを除去します)ですが、動脈硬化による病気のリスクが高いので、運動療法を始める際には、運動の安全性を確認するため、医師への相談が必要となります。家族性高コレステロール血症の可能性があると思われた方は、専門医へご相談下さい。

 

成人(15歳以上)家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体診断基準

1. 高LDLコレステロール血症(未治療時のLDLコレステロール180㎎/dl以上)

2. 腱黄色腫(手背、肘、膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫

3. 家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)

 

・続発性高脂血症を除外した上で診断
・2項目以上で家族性高コレステロール血症と診断する。家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体疑いは遺伝子検査による診断が望ましい。
・皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない。
・アキレス腱肥厚はX線撮影により9mm以上にて診断する。
・LDL-Cが250㎎/dl以上の場合、家族性高コレステロール血症を強く疑う。
・すでに薬物治療中の場合、治療のきっかけとなった脂質値を参考にする。
・早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義する
・家族性高コレステロール血症と診断した場合、家族についても調べることが望ましい
・この診断基準はホモ接合体にも当てはまる。

<参考文献>

家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2017

この記事の講師

岩城 聡子

<略歴>
獨協医科大学総合診療科
日本医師会認定産業医
日本循環器学会専門医
関東で嘱託産業医および内科医として勤務

 


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