産業医科大学産業衛生教授
浜口 伝博
“2020”は「ぞろ目」で「切り」もよく、おまけにオリンピックも付いてくるとあって、何となくいつもの年よりもお得感があって、今年は春から縁起がいいわい!という気分です。こういう気分の良さがそのまま景気にも反映して、社会が明るい話題で包まれるような年になってほしいものです。
さて、昨年日経新聞朝刊(7/1)に「心の資本を増強せよ」との記事が載りました。産業医の立場から読んでいても合点のいく内容だったのでよく覚えています。
この記事では、日本の従業員エンゲージメント指数はいつも世界最低レベルにあることが指摘されていて(日本人は仕事に対してポジティブでなく充実した心理状態ではない。職場満足感や所属意識が低い)、これを克服するためには従業員の「心の資本を増強する」必要があるとの主張になっています。
解決のためには、グーグルでは「心理的安全性」の重要性にたどり着いたと記事は続き、何かというと「何か失敗をしても職場から嘲笑されたり罰されることもなく、引き続きチームの一員として尊重される」と本人が確信できること、が重要だと指摘しています。また記事はこう続きます、「米国カリフォルニア大ソニア教授によると、『自分は幸福だ』と感じている人は、そうでない人より仕事の生産性が31%高く、創造性は3倍になることがわかった。同教授は『成功が幸福を招くのではない。幸福(だと感じること)が成功を生むのだ』とも指摘する。」と紹介されています。
つまり記事からいえることは、職場で信頼安心できる同僚たちに囲まれ(心理的な安心感があり)、自分は幸福だと感じることができる風土(互いに尊重し合い認め合う文化)があれば、従業員のエンゲージメントは向上し、加えて生産性も創造性も高まる、ということのようです。
そういう意味でいえば、すでに年初から、「何となくいつもの年よりもお得感があって、今年は春から縁起がいいわい!という気分」でいるのですから、いつもよりも幸福感が高まっているのは事実です。
ということは、この時点で生産性は31%上がり、創造性も3倍向上していることになります。またこういう職場からは、不正も起らず、労災も起こりにくいこともわかっています。
もちろんですが、健康で優秀な人材が育つことも期待できます。職場の活性化は一人ひとりの幸福感によるところが大きいんですね。
浜口 伝博
<略歴>
産業医科大学産業衛生教授
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