日本医医師会認定産業医 労働衛生コンサルタント
松本 理
突然ですが、皆さまお酒はお好きですか?私は、割と好きな方です。
年の終わりに、職場の同僚と、気の合う仲間とちょっと一杯やりながら今年を振り返る…そんな季節がやってきましたね。最近は若年層を中心にアルコールの消費量が低下していますが、まだまだ根強い人気を誇るのも事実でしょう。
今回はそんな「お酒」にまつわるお話です。お好きな方も多くいらっしゃるとは思いますが、実はアルコールには『依存性のある薬物』という恐ろしい一面もあります。
アルコール依存症の人なんて、めったにいるもんじゃないでしょう!
自分はお酒を飲んでないと手が震える、なんてことはないから関係ないよね?
……本当にそうでしょうか?
アルコール依存症に陥る可能性や、生活習慣病の原因となる危険な飲酒行動(純アルコール換算で男性40g/日、女性20g/日以上)を行っている人の割合は、男性で14.6%、女性で9.1%に上る(H.28年度 国民健康・栄養調査)といわれています。なんと、男性の7人に1人、女性の10人に1人がアルコール依存症に陥る可能性のある危険な飲酒習慣があるというのです!どうでしょう?自信をもって「自分には関係ない!」と言えるでしょうか。また、社内に怪しい人はいないでしょうか?
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールにして男性は約20g程度、女性は10g程度であるとされています。
純アルコールは、以下の式で計算されます。
<純アルコール量=飲酒量×度数×0.8>
例えば、ビール(アルコール分5%)だとロング缶(500ml)でちょうど純アルコール20gです。
日本酒(アルコール分15%)だと1合(180ml)、ウイスキーだとダブル1杯(60ml)くらいが、適切な飲酒量になります。女性はその半分が目安です。
最近流行りの『ストロング系』チューハイはアルコール分9%…これをロング缶1本(500ml)飲むと純アルコールは何gでしょうか?答えは36gです。これだけで、危険な飲酒習慣に近づいてしまいますね。
アルコール依存症は、お酒を飲むのか飲まないのか、を自分ではコントロールできなくなる状態です。簡易テストとして『CAGEスコア』と呼ばれるものがあります。
以下の4つの質問のうち2項目以上が当てはまる人にはアルコール依存症の可能性があるといわれます。
1.Cut down
あなたは今までに、飲酒を減らさなければいけないと思ったことがありますか?
2.Annoyed by criticism
あなたは今までに、飲酒を批判されて、腹が立ったり苛立ったりしたことがありますか?
3.Guilty feeling
あなたは今までに、飲酒に後ろめたい気持ちや罪悪感を持ったことがありますか?
4.Eye-opener
あなたは今までに、朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?
この項目に当てはまる場合には、早めに医療機関での支援を受けるようにしましょう。
先ほども申し上げたように、アルコール依存症に至る危険な飲酒行動をとっている成人は男性で7人に1人、女性で10人に1人。決して、珍しい病気ではないのです。
アルコールの依存性の強さは、シンナーや大麻にも勝り、覚せい剤と同等とも言われます。
正しい知識をもって、健康を守り、楽しくお酒と付き合っていきましょう。
このコラムが、私と同じお酒好きの皆様のお役に立ちますように。
<参考>
・厚生労働省 健康日本21 アルコール
・依存症対策全国センター 日本人の飲酒傾向
・クリニックで診るアルコール依存症 減酒外来・断酒外来 倉持 穣/星和書店
松本 理
<略歴>
日本医医師会認定産業医
労働衛生コンサルタント
産業保健法務主任者
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