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自分も相手も尊重するコミュニケーション=アサーションとは?

産業医
堤 多可弘

始めに、昨今、メンタルヘルスの問題は社会で幅広く取り上げられ、ストレスチェック制度の施行などによりますます関心が高まっています。そのため、メンタルヘルス対策が様々に行われています。しかし一口にメンタルヘルス対策と言っても、アプローチは無数にあります。今回はその中でもコミュニケーションに関わるお話です。

 

■アサーションとは?
アサーションとは「自分も相手も尊重する自己表現」という意味を持つコミュニケーションの理論と方法です。アサーションの理論と方法は、アメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピによって開発されました。ウォルピはカウンセリングを受けに訪れる人のコミュニケーションの一助となるべくアサーションの方法を伝え訓練したと言われています。

まずアサーションをわかりやすく理解するには、アサーティブとは言えないコミュニケーションの例を説明します。アサーティブとは言えないコミュニケーションの代表格は「攻撃的自己表現」と「非主張的自己表現」です。
攻撃的自己表現は、何か頼みごとをするときなどに、押し付けたり、強く命令したりして相手に選択の余地を与えないようなコミュニケーションです。逆に非主張的自己表現は、自分を押し殺して、相手の事ばかり優先するようなコミュニケーションです。いずれも、相手もしくは自分を尊重していないという点でアサーティブではないと言えるでしょう。

 

■アサーションのコツ:「DESC法」
アサーションの概念や方法すべてを理解することは非常に大変ですが、今回はその中でも日常のコミュニケーションでも有用なDESC法というものを紹介します。

DESC法は「問題解決のアサーション」とも呼ばれ、問題解決に向かって話し合う時などに使います。問題は大きなものでなくても、たとえばたくさんの仕事を頼まれてしまった時、予定がどうしてもあわない時などでも応用できます。

「DESC」は下記4項目の頭文字です。
D : Describe 状況の描写
E : Express, Explain, Empathize 表現、説明、共感
S : Specify 特定の提案
C : Choose  選択肢の提示

 

まず、何か問題に面した時、
・Dで客観的に状況を描写
・Eで自身の状況や相手の事情などに言及
・Sで問題解決のための提案
・Cで新たな選択肢を提示(Sの提案が通らなかった場合)


例を出して説明します。まず状況として、非常に忙しいAさんが、部長から期日が迫っている仕事を頼まれてしまったという場面を想定します。

まずはDescribeとしてAさんは「今は複数の案件を抱えています」と状況を描写します。
そして「そのため自分は余裕がないです」と自身の状況を表現、説明します。
そして「部長もお忙しいところ非常に申し訳ないのですが、他の人にお願いできないでしょうか?」と提案します。
もしこれが通ればOK、通らなければ「では1週間の期限延長はどうでしょうか?」と選択肢を提示します。


こういったコミュニケーションを重ねることで少しでも快適なコミュニケーションが実現でき、コミュニケーションに起因するメンタルヘルスの問題が減少すれば理想的ですね。もしご興味がある方は、様々な本が出ていますが、本章でも参考にした下記書籍がおすすめです。漫画ですがしっかりした説明もあり、とっつきやすいのが特徴です。


最後になりますが、アサーションはけして交渉術や説得術のようなものではなく、あくまで相互を尊重するコミュニケーションであるということには留意してくださいね。

<参考書籍>

マンガでやさしくわかるアサーション 
平井典子 著、平井 博文 シナリオ制作、サノマリナ 作画
発行所:日本能率協会マネジメントセンター

この記事の講師

堤 多可弘

<略歴>

産業医・労働衛生コンサルタント、精神科専門医
東京女子医科大学 精神科 非常勤講師

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