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糖尿病・メタボリックシンドローム・脂肪肝・脂肪筋

Basical Health産業医事務所
佐藤 文彦

【急増する糖尿病患者数】
 厚生労働省が実施した2016年国民健康・栄養調査によると、我が国における「糖尿病が強く疑われる」数は2016年に初めて1,000万人を上ったことが分かりました。

この要因としては、近年、食事の欧米化や交通機関の発達による身体活動の低下が考えられています。さらに現在、世界の中で最も糖尿病患者数が多い国は中国(約1億1440万人)で、2位がインド(約7290万人)と推計され、今や世界の糖尿病患者の半数近くがアジア人と考えられているほど、とてつもないスピードで糖尿病の方が増えてきています。

【参考資料】11 月 14 日は世界糖尿病デー

 

【糖尿病・メタボリックシンドロームと合併症】
 糖尿病は、特に初期の段階において、自覚症状がほとんどありません。このため、普段の仕事や生活にさしたる影響もなく、自分が糖尿病だという現状を受け入れにくい方もおられるかもしれません。しかし、血糖値・HbA1c値は、高値が持続すればするほど、糖尿病の3大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害)の発症・進展する可能性は明らかに高まっていきます(図1)



【まずは、5~10%の減量から始めましょう】
 日本人を含めた黄色人種は、欧米諸国の白人・黒人に比べ、少しお腹周りが太っただけでも、糖尿病や動脈硬化が発症しやすい体質があるといえます。このため、少しでも体重が増えてしまったなら、早期に減量して、体重を戻しておくことが大切です。


本来摂取したエネルギーは、余剰分があれば脂肪組織に蓄えられます。しかし、さらに食べ過ぎてしまうと、本来溜まらないはずの、肝臓や骨格筋の細胞内に脂質が過剰蓄積してしまいます。これを、我々の研究室では「脂肪肝・脂肪筋」や「異所性脂肪」と定義し、臨床研究を行ってきました。


実際に2型糖尿病患者さんが2週間程度入院されると、2~3kg程の体重が減少し、これに伴い血糖値や中性脂肪値も改善されます。この理由として、食事療法により、肝臓内の脂質(脂肪肝)が顕著に減少し、また、運動療法により、骨格筋の細胞内脂肪(脂肪筋)が有意に改善することがわかってきました(図2)(Tamura Y. et al. J Clin Endocrinol Metab, 2005)。



また、糖尿病ではない肥満症の方でも、1日の食事摂取カロリーを減らし、5~10%程度の体重減少を行うだけでも、脂肪肝は著明に改善し、中性脂肪値や血圧が正常化していくことがわかりました(Sato F. et al. J Clin Endocrinol Metab, 2007)。

この様に、薬物療法を使用または追加しなくても、食事・運動療法をしっかりと基本通り行っていけば、こういった「脂肪肝」や「脂肪筋」は改善していき、意外なほど確実に効果が出る方も多数おられます。

 

【糖尿病の薬物治療は、インスリンから経口血糖降下薬の順で】

 健康診断で血糖値・HbA1c値が高値であった糖尿病患者さんに対しては、できる限り早めのインスリン治療開始を勧めています。インスリン治療と食事・運動療法を併用し、しっかり血糖値と体重を改善させた後に、インスリン治療を「卒業」していただき、その後は体重の増加しにくい経口血糖降下薬に変更していくことが、最もご自身の体にとって負担のかからない治療です。


この治療法により、特に膵臓や心血管系への負担が軽減されると考えられます。ただ、ご自身の膵臓から、インスリンが充分に分泌できない方や、やせ形の糖尿病の方では、インスリン治療の継続が必要な場合が多いことも、実情としてはもちろんあります。

このため、ご自身は実際にどういった状況にあるのかを、一度必ず糖尿病専門医の先生と相談されることをお勧めします。糖尿病専門医の検索方法は、日本糖尿病学会のホームページでも検索することができますので、是非ご活用されて下さい。

この記事の講師

佐藤 文彦

<略歴>

平成10年、順天堂大学医学部 卒業後、東京都済生会中央病院 内科臨床研修医を経て、日本赤十字社医療センター、順天堂大学医学部内科・代謝内分泌学講座 准教授、順天堂大学附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 科長 など、糖尿病の最先端分野での診療・研究を長年行っていた。日本IBM株式会社の専属産業医、健康保険組合選定議員の後、平成30年より現在の「Basical Health産業医事務所 代表」となる。

【所属学会・資格】
・日本内科学会(内科認定医)
・日本糖尿病学会(糖尿病専門医・研修指導医)
・日本肥満学会(肥満専門医)
・日本医師会認定 産業医・健康スポーツ医
・日本コーチ協会(認定メディカルコーチ)

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