武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太
仕事と家庭生活やプライベートを両立させるには、どうすればよいのでしょうか。
2つを明確に分けたいという人もいれば、2つを分けずに共に充実させたいと考える人もいるでしょう。しかしながら残念なことに、仕事の種類や周囲の期待があなたの望むスタイルで境界マネジメントすることを許さないことも多いようです。
例えば、あなたが仕事とプライベートを明確に分けたいと考えていたとしても、あなたの上司や同僚がそれを許さず、顧客からの要望を電話やメールで伝えてくるケースがあります。逆に、あなたが仕事とプライベートを分けずに暮らしたいと考え、バカンス先でノートパソコンを開いていると、家族の不満が高まるかもしれません。
私たちは自分が置かれた環境をある程度受け入れつつも、その上で上手にやりくりすることが求められています。
Kreiner, G. E., Hollensbe, E. C., & Sheep, M. L. (2009)では、私たちが変えるべき4つのポイントを整理しています。
1つ目は、行動を変える方法です。スマートフォンやメールなどの情報技術や、周囲の人の力を「借りる」ことで適度な距離を守ろうとします。例えば、休暇中にかかってきた仕事の電話は、まず留守番電話に要件を残してもらうようにする。メールの中でも緊急性の高いものだけ「トリアージ」するなどです。
2つ目は、時間の使い方を変える方法です。柔軟な仕事の使い方が可能な仕事の場合には、業務と業務の間に子どものお迎えに行ったり、病院に行ったりする、という人もいるかもしれません。また、意図的に仕事や家庭の仕事から離れる自分だけの時間を確保することが重要だ、と考える人もいるようです。休日や休憩時間を確保して、自分の趣味に没頭する時間を確保することでかえって、仕事も家庭もうまくいく、ということも考えられます。
3つ目は、「物」の使い方を変える方法です。例えばオフィスと家の物理的距離の取り方です。オフィスから離れた場所に部屋を借りるのが望ましいのか、近くに借りたほうが望ましいのか、適切な距離の取り方は人によって違うようです。また職場に家族や子どもの写真を持ち込むこと、や、家に職場の資料などを持ち込むこと、をやめることで両者を分けることが可能になる場合もあります。
4つ目は、コミュニケーションを変える方法です。事前に週末にメールは見ることができない、と周囲に伝えることもできます。また伝えているにも関わらず返信を求めるメールを送ったり、電話をかけてきたりする同僚には直接そのことを伝えることもできます。
すでに皆さんが用いている方法もあったかもしれません。しかし、他のポイントも同時に活用することで、自分の望むスタイルにより近づけるかもしれません。ご自身の普段の振る舞いを振り返るヒントにしてみてはいかがでしょうか。
(※1)参考文献
Kreiner, G. E., Hollensbe, E. C., & Sheep, M. L. (2009). Balancing borders and bridges: Negotiating the work-home interface via boundary work tactics. Academy of management journal, 52(4), 704-730.
森永 雄太
武蔵大学経済学部経営学科 教授
略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。
専門は組織行動論、経営管理論。
主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。
2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。
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