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睡眠とパフォーマンスはどのように結びつくか

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


健康経営が普及するにつれて、従業員の健康と関連が深い睡眠への注目が高まってきました。睡眠と従業員行動関係は、今後研究の蓄積が期待される有望な研究領域ですが、徐々に興味深い知見が蓄積されてきています。Henderson & Horan (2021)は、これまで睡眠と仕事のパフォーマンスの関係を調べた75の研究結果を収集して統合し、再計算(メタ分析)しています。その結果、睡眠は仕事のパフォーマンスと正の相関を持つことが明らかにしています。この種の調査で因果の方向性を特定するのは難しいことが多いですが、多くの研究では、良好な睡眠が良いパフォーマンス行動を引き起こす、という因果を仮定しています。

この論文では、パフォーマンスを3つに分けることで、睡眠がどのようなパフォーマンスに影響を与えるのかをより詳しく検討しています。1つ目はタスクパフォーマンスです。公式に決められた役割を遂行することを指します。2つ目は、次に周りの人を助ける行動など公式に期待される役割+αの行動をとる度合いです。専門的には組織市民行動(OCB)と呼ばれます。最後に、組織の利益や規範に反する行動をとる度合いです。非生産的仕事行動(CWB)と呼ばれることもあります。これは組織市民行動の逆で組織の生産性を低下させるような行動をとる度合いです。当然のことながら、この行動をとることはパフォーマンスを下げることとみなされます。

睡眠と3つのパフォーマンスはどのように結びつくのでしょうか。この論文では、いくつかの要因を介した複雑な相関関係が明らかにされていますが、その中でも比較的強く影響するとされた3つの経路を紹介します。図をご覧ください。第1の経路は、睡眠によって意欲や能力といった認知的資源が高まり、パフォーマンスに結びつくという経路です。睡眠によって疲労が回復し、作業に集中することができるとか、頑張ろうという意欲が高まる、といったロジックです。

第2と第3の経路は、感情に関わるものです。良い睡眠が、ポジティブな感情に結びつけば、人は+αの良い行動(すなわち組織市民行動)までとるようになります。一方、睡眠の悪い影響が、ネガティブ感情を高めてしまうと、非生産的仕事行動を誘発してしまいます。よく寝られないことでイライラしてしまい、つい職場のルールを破る行動をとってしまった、というようなケースが含まれます。

このように睡眠は、職場における従業員の様々なパフォーマンス行動に影響を与えるものの、その経路は若干異なることが分かっています。また睡眠がOCBやCWBに及ぼす影響はタスクパフォーマンスに対する影響と比べると相対的に小さいものであることも明らかにされました。すなわち睡眠が与える影響は、決められた行動に対するものの方が、+αの行動に対する影響よりも大きいようです。もし皆さんが経営者や管理者として従業員に決められた行動をきっちりとってほしいと考える場合には、良好な睡眠の確保に注目してみるのも1つの方法かもしれません。



 

 

Henderson, A. A., & Horan, K. A. (2021). A meta‐analysis of sleep and work performance: An examination of moderators and mediators. Journal of Organizational Behavior.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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