武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太
-自分のスタイルを自覚するための2つの質問-
仕事と家庭の両立を目指すワーキングパーソンにとって、「ワーク・ファミリーコンフリクト」は避けて通れない重要な問題です。
仕事と家庭の両立を通じてイキイキと働くためには、2つの役割の境界をうまくやりくりする境界マネジメントが有効です。境界マネジメントには、いくつかのスタイルがあり、それぞれの長所と使用上の注意点を理解しておくことが重要です。
まずはご自身の境界マネジメントを自覚することが重要です。以下の2つの質問に
1:全く当てはまらない、
2:少しあてはまる、
3:どちらともいえない、
4:少しあてはまる、
5:とてもよくあてはまる、のうちどれが最も適するのか答えてみてください。
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【質問1】私は、プライベートな時間や家族の時間にも仕事をすることがある。
【質問2】私は、仕事時間中に、自分や家族のことに取り組むことがある。
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「境界のやりくり」のスタイルには、仕事と家庭の区切りをつけない「統合型」と両者を明確に分ける「分離型」があると紹介しています(Kossek, 2016)。
統合型とは、上記の質問1と2に、両方とも両方4や5を選んだ人が当てはまる可能性が高いです。仕事も家庭もどちらの役割も同時対応することができ、周囲の予定に合わせやすいのが特徴でしょう。ただし、うまくモードを切り替えることができないとコンフリクトを感じやすくなったり、心理的な負担が蓄積する危険性もあります。
一方、分離型とは、2つの質問が共に1や2であったという人が採用している方法です。仕事は仕事、プライベートはプライベートと、ときっちり分ける方法です。ある時間はその役割に専念するという意味でプロフェッショナルな振る舞いができます。ただし、両者の間に相乗効果をもたらしたりすることはありません。
この2つの基本形に加えて第3の「サイクル型」の人もいるといわれています。柔軟な働き方が可能な職種などで、1日の中でも統合型と分離型を頻繁に切り替えることが可能な場合に採用されます。サイクル型を取り入れれば極めて柔軟な時間の活用が可能になりますが、予定を詰めすぎになり、想定外の出来事があった場合にうまく対処できなくなることもあるとされています。
7つの質問のうち最初の2つに答えることを通じてご自身の境界のマネジメントスタイルがどのようになっているのか振り返ってみましょう。より重要なのは、スタイルについて同僚と話しあってみることです。同じ職場なのに、異なるスタイルをとっている人がいるかもしれません。もし、あなたが「境界のやりくり」がうまくいっていないと感じたりする場合には、思い切ってスタイルを変えてみることも有効かもしれません。
(※1)参考文献
Kossek, E. E. (2016). Managing work-life boundaries in the digital age. Organizational Dynamics, 45(3), 258-270.
森永 雄太
武蔵大学経済学部経営学科 教授
略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。
専門は組織行動論、経営管理論。
主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。
2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。
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