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多様性の効果は、多様である

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武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太

少子高齢化の急速な進展とともに、人材確保が課題となる企業が増えてきました。そのため多くの企業にとって、多様な人材の活用が喫緊の課題となってきました。そこで、今回から3回にわたって多様な人材の活用についてマネジメントの観点から考えたいと思います。

 

「ダイバーシティを推進しよう」という文脈では、職場に多様な意見が飛び交うことで「組織の創造的な成果を高めたり、イノベーションを生み出したりすることにつながる」というポジティブな側面がしばしば語られます。確かに人材のダイバーシティが高まると従来とは異なる情報と情報の結びつきが生まれる可能性が高まりますので、そのような効果が期待できる、というのは、確かです。

 

しかしながら、多くの企業にとって職場のダイバーシティを高めることは容易ではありません。それは、ダイバーシティを高めることが集団や組織に否定的な影響を与えることも多いからです。


これまでの研究でも、性別や国籍など「目で見てわかりやすい属性の(表層的)ダイバーシティ」を高めることは集団がもめる原因ともなることが明らかになっています。人は、属性の違いを認識すると男性グループや女性グループといったようにグループ分けをし、自分が属するグループに好意的な態度をとってしまう傾向があるからです。


このような傾向が言動に現れることで、議論や意思決定が建設的になされなかったり、そもそも上で期待されたような良質な情報交換がなされなくなったりしてしまうことがあるのです。

 

学術的にはダイバーシティが良い影響を与えるか悪い影響を与えるか、は、ダイバーシティの種類によって整理できるという主張が一般的です。


図をご覧ください。ダイバーシティは「性別・年齢・人種(国籍)といった表層的なダイバーシティと価値観・経験・学歴(スキル)といった深層的なダイバーシティに分けられます。そして組織や集団内で良好な情報のやり取りを高めて創造性に結びつくことが期待できるのは深層的ダイバーシティに限られ、表層的ダイバーシティは悪い影響を与えやすいといわれています。


多様性の効果は、多様である2.png


女性や外国籍の従業員を採用しても、職場内で分裂が生じれば成果には結びつきません。職場内で「差別」があると認識されたりすれば従業員のウェルビーイングにも悪い影響を与える可能性があります。


では、少子高齢化が進み人材不足に悩む企業は、どうすればよいのでしょうか。昨今注目されているのが「インクルージョン」という考え方です。


次回以降は、インクルージョンを高める取り組みや注意点について紹介していきます。

 

 

日本の人事部ホームページURL:https://jinjibu.jp/keyword/detl/250/

林祥平・森永雄太・佐藤佑樹・島貫智行(2019)

「職場のダイバーシティが協力志向的モチベーションを向上させるメカニズム」

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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