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長時間労働はどのように健康に影響を与えるのか

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


過度の長時間労働は従業員の健康に悪影響を与える可能性があります。ただし従業員の長時間労働と冠動脈性心疾患およびうつ病との間には、統計的に有意な関連がある一方で、その効果の大きさが必ずしも大きいものではないという指摘もあります(例えばGanster, Rosen,  & Fisher, 2018)。労働時間管理を従業員の健康確保に活かすためには、一歩踏み込んで両者が結びつくプロセスを理解していくことが重要でしょう。
岩崎(2008)では、長時間労働が心身の健康に与える影響過程が解説されています。

図1をご覧ください。仕事時間の増加は、仕事の負荷の増加を介して健康問題に結びつくという経路が想定されています。客観的な仕事時間の増加そのものというよりも、仕事時間の増加によって生じた「負荷」の増加が直接的な影響要因であるという考え方です。

確かにだらだら残業をして仕事時間が増加しても、それが負担増にならなければ健康への影響はあまりないかもしれません。逆に、客観的な仕事時間そのものが変わらなくても、仕事時間中に求められる業務の量や難易度が変わって負荷が増えれば健康に悪影響を及ぼすことが考えられます。


 

上の点と関連して注目したいのが、2つの影響要因(図中の破線の要因)です。

1つ目が仕事時間と仕事の負荷の関係に影響を与える「他の仕事」要因です。例えば仕事の密度や夜勤などの勤務形態、心理的負荷などが挙げられています。労働時間以外の仕事の質や内容によって仕事時間が仕事の負荷に与える影響が変わってくるので、現場のマネジメントでは、これらの影響も考慮に入れることが重要です。

もう1つが、仕事の負荷と健康問題の関係に影響を与える要因です。同じ仕事負荷であってもそれに耐えられる人と耐えられない人がいます。ここでは年齢や体力などの要因が指摘されており、上司は、「昔の自分が大丈夫だったから」と考えるのではなく、耐性の個人差を考慮したマネジメントを行うことも求められます。


このように仕事時間と健康の関係は様々な影響を受けるため、上司は一律的な時間管理に留まらずに、影響要因についても考慮に入れることが重要です。一方で組織が労務管理の一貫として時間管理を行っていく場合には、客観的な労働時間を重視した管理を厳格に行い、仕事の質や体制の個人差やそれに対する上司のマネジメントに依存しない管理を行うことが有効であると考えられます。

仕事時間をどのように管理していくのかについて、立場によってアプローチを変えていくことが有効かもしれません。

<参考文献>

Ganster, D. C., Rosen, C. C., & Fisher, G. G. (2018). Long working hours and well-being: What we know, what we do not know, and what we need to know. Journal of Business and Psychology, 33(1), 25-39.

岩崎 健二 (2008) 「長時間労働と健康問題-研究の到達点と今後の課題」『日本労働研究雑誌』 (575) 39-48.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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