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これがあれば給与の違いも納得できる!?手続き的公正の視点

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


多くの企業で成果主義型な賃金制度が導入されるようになり、社内の同期の間でも給与やボーナスに違いがあることは珍しいことではなくなってきました。今回は、このように報酬の違いによる不満を緩和する手続き的公正について紹介します。

 

20世紀の終わりごろから徐々に仕事の成果を報酬に紐付けて報いようとするいわゆる成果主義型の賃金制度が導入されるようになりました。従業員にとって最も関心度の高い報酬の1つである金銭面の報酬に差をつけようとするわけですから、もしこの分配に従業員が納得しなければ、従業員の意欲的な行動を引き出せなくなったり、場合によっては社内で足のひっぱりあいをしたりする、というような望ましくない行動を誘発する可能性があります。そのため、報酬の分配に違いがあったとしても、その分配について従業員に納得してもらう必要性がこれまで以上に高まってきました。

このような変化を背景に、報酬を分配する「過程」についての個人の知覚の1つである手続き的公正に注目が集まるようになりました。
手続き的公正理論に関する一連の研究では、ある人がその状況を公正であると考えるのは、(例えば、報酬の)分配の結果が公正であるからというよりも、その報酬を分配するまでの手続きが公正であるからであると考えます。そのため手続き的公正が認められれば、その結果としての報酬の分配に仮に違いがあったとしても、公正だと考えてもらいやすくなる、と主張します。

組織が制度の手続き的公正を高めるためにはどのようなことができるのでしょうか。守島(2008)によれば、
第1の要素は、情報公開です。
評価基準や評価の結果を公開するなど、人事考課手続きに関する情報を公開することで透明性を高めることができます。

第2の要素は、分配決定時に声を上げる仕組みづくりです。
報酬分配のもとになる評価には苦情が伴います。評価に対する不満を申し出たり、救済する機会を提供したりすることで適切に処理していくことが有効です。

第3の要素は、分配システム設計段階で声を上げる仕組みづくりです。
会社の方針や制度そのものに対しても、いざとなれば意見を言う機会があることが重要です。また制度そのものに対しても意見や要望を伝える機会を作ったりすることが有効だとされています。これらは古典的な議論ではあるものの、新しい制度を取り入れる際のチェックリストとしても参考になるかもしれません。


 

<参考文献>

守島基博(2008). 「今、公正性をどう考えるか:組織内公正性論の視点から」RIETI Discussion Paper Series 08-J-060.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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