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給与の不満を減らすには:公平感が生じる仕組み

(不)公平感

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


従業員のウェルビーイングを考えるうえで、給与への不満は避けて通れません。私たちは給与が上がればうれしいし、下がれば残念に思うものです。
しかし、最も不満を感じるのは職場の同期や同僚など近しい誰かの給与や報酬と自分のそれを比べて不公平感を感じた時ではないでしょうか。
今回は、このような給与の(不)公平感が生じるメカニズムと対処法について紹介していきます。

 

私たちが公平や不公平を感じるメカニズムはAdams(1965)によって端的に説明されています。
それは「得られた報酬(アウトプット)」に対して自分が投入したインプット(努力や貢献)の割合が、比較対象のそれと比べて同じと感じられれば公平と感じ、そうでなければ不公平を感じる、というものです。

例えば、ある人が10時間働いて得られたアルバイト代が10,000円だったのに、同僚が同じ10時間働いて12,000円の報酬を得ていたとしたら、投入したインプットは同じなのにアウトプットが異なるため過小報酬の状況だと感じ、不公平を感じます(ちなみに、自分の方が多く報酬を得ていた場合でも過大報酬を感じ不公平感を感じるとされています)。

公式上は簡単なメカニズムで生じる不公平感ですが、現実には複雑です。
そもそも従業員が投入するインプットは時間だけではなく、スキルの高さやこれまでの経験、担当する役割など多様です。
同時にアウトプットも、金銭的報酬だけでなく、希望通りの配属や福利厚生など多岐にわたります。そのため様々なインプットの違いを加味する中で、アウトプットの違いが周囲からみると「公平」な場合でも、特定の従業員からすれば不公平だと感じてしまう場合もあるのです。

また組織や管理者にとっては、不公平を感じた従業員が「不公平を解消する方向に動機づけられる」ことに留意する必要があります。
例えば自分が過少報酬状態にあると感じた従業員が、昇給を訴えても聞き入れられなかった場合、インプットを減らして(例えば、仕事をさぼって)不公平を解消しようとするかもしれません。また、よくない方法でアウトプットを増やすこと(例えば職務中の横領など)を試みるかもしれません。

このような望ましくない解消行動を防ぐためにも、適切な対処を取ること必要があります。
例えば、面談時のコミュニケーションを通じてインプットやアウトプットの認識を組織側と個人側で摺合せしていく必要があります。また、従業員が比較している対象を適切な人物に設定することも不公平感を修正する上で有効です。
部下との面談時にこれらのポイントについて気にかけてみるのはいかがでしょうか。

(不)公平感の知覚

 



<参考文献>

Adams, J. S. (1965). Inequity in social exchange. In Advances in experimental social psychology (Vol. 2, pp. 267-299). Academic Press.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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