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背伸び課題で努力を続ける「効力感」の高め方

背伸び課題で努力続ける「効力感」の高め方

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


学びをもたらすための背伸び課題では失敗をしつつも何度も試行錯誤を繰り返すことが求められます。試行錯誤を続けるために求められる要因の1つが、この業務を自分なら上手にやり遂げられるはずだという自信です。
今回は部下がこの「自信」を高めるために組織側が取り組める方法について紹介します。

 

心理学者のバンデューラは、「自己効力感」というキーワードを用いて、従業員の自信に迫ろうとしています。そして、自己効力感は4つの方法で高めることができると考えられてきました。
本稿では、このうち組織や管理者が従業員や部下の自身を高めるために活用できそうな3つのポイントに注目して、その応用方法を説明していきます。

第1のポイントは、直接経験です。
従業員が実際に成功体験を積み重ねることで、少しずつ効力感を高めることができるという考え方です。難易度別の多様な教材を用意して、1段1段少しずつ階段を上るように成功経験を積み重ねさせるような教育方法は、この直接経験をふんだんに活用しているといえるでしょう。

第2のポイントは、観察(代理経験)です。
私たちは自分自身が取り組んでいなくても、周囲の従業員が上手に取り組んでいる様子を見る(観察する)ことによって、自分もやれそうだ、と自信を得ることができるといわれています。野球部に入部したての高校1年生にとって、甲子園に出場して活躍することは未知の領域かもしれません。しかし、同じ中学出身の2つ年上の先輩が、高校での鍛錬を通じて実力を挙げている様子や、その結果甲子園出場を決めている様子を目の当たりにすることで、自分たちもできるのではないだろうか、と考えるようになるでしょう。

第3のポイントは、言語による周囲からの説得です。
上司や先輩などから、「お前ならやれるよ」という声掛けが自信につながることもあります。ただし、一方的に上司が「説得」を試みても受けての心が開いてない限り心には響かないでしょう。どういったタイミングで言葉をかけるのかや、そもそもの関係性づくりが伴うことも重要そうです。

さて、成功体験をスモールステップで積み重ねていくことを通じて効力感を蓄積していくことが王道であり、かつ重要であることは言うまでもありません。しかし、現実の世界ではこのような理想的なステップを丁寧に踏めない事情に直面することが多いのも事実です。また、乗り越えるべき魅力的なチャンスこそ、突然やってくることも多いでしょう。
そうしたときに、第2のポイントや第3のポイントが重要になってくると考えられます。例えば、社内でメンタリングを導入するということは、良質な観察学習の機会を提供しているとともに、そこでもたらされる良質なコミュニケーションを通じて説得を活用しているといえるでしょう。成功経験頼みの一本やりにならずに、多様な引出しを必要に応じて活用することで、突然の抜擢やチャンスに強い人材育成・組織作りにつながるかもしれません。

自己効力感


出所:Bandura(2006)の記述を元に著者作成

Bandura, A. (2006). Guide for constructing self-efficacy scales. Self-efficacy beliefs of adolescents, 5(1), 307-337.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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