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背伸び課題を学びのチャンスにする「しなやか」マインドセット

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太


 挑戦課題は従業員の学びや成長に結びつくと考えられます。しかし、背伸び課題が与えられたときに、試行錯誤を繰り返しながら学びを得て、成果へと結びつけられる人と、早々にあきらめてしまったり、粘り強く取り組むこと自体を回避したりしてしまい、学びのチャンスを逃してしまう人もいるようです。
今回は背伸び課題を学びのチャンスに変えるための個人側の要因について紹介します。

 

ドウェックの一連の研究では、①困難な課題に直面した際に、その従業員が努力を続けるか(うまくいく方法を探して試行錯誤を続けるか)、②無力感に陥るか(あきらめてしまうか)は、2つの要因によって決まると説明されます。

1つ目の要因は、従業員による自分の能力に対する認知です。
その課題をこなすだけの能力があるかどうかについての自信と言い換えてもよいかもしれません。当たり前のことですが、高い自信を持っていれば何度か失敗が続いても「自分ならなんとかできるはずだ」と考えて努力を続けるでしょう。そして、努力を続けているうちに学びを得て上手に業務を遂行できるようになります。逆に、自信の程度が低い人の場合は何度か失敗が続くとあきらめてしまうというのです。

2つ目の要因は、目標のタイプです。
職場で従業員が「能力を高めていくこと」を目標としている場合には、失敗が続いても努力を続けます。逆に「自分の能力が高いことを周囲に知らしめること」を目標としている場合には(失敗を続けることが、自分の能力が十分でないことを周囲にしらしめることになるので)失敗をさけるために試行錯誤もやめてしまうというのです。

教育現場や職場など従業員の学習に注目する研究領域では、これまでどちらかという第1の要因に注目して、いかに業務遂行能力に対する自信を持ってもらうのかについて検討してきました(この点については次回の記事でとりあげます)。
しかしドウェックの研究では「能力を高めていくことを目標」とするマインドセット、いわば「しなやかマインドセット」の重要性を主張しています。なぜなら、しなやかマインドセットを持っている従業員は、自信の程度の高低に関係なく努力を続けることができるからです(表を参照のこと)。

従業員に自信を持ってもらうことも重要ですが、従業員が「最終的に能力を高めていくこと」が重要だと感じられるように、職場内でのコミュニケーションや評価方法を工夫してみてはいかがでしょうか。

<表>

出所:Dweck & Leggett (1988)に基づき筆者作成

Dweck, C. S., & Leggett, E. L. (1988). A social-cognitive approach to motivation and personality. Psychological review, 95(2), 256-273.

森永雄太 (2017) 「ジョブ・クラフティングをうながす「しなやか」マインド・セット」『職場のポジティブメンタルヘルス2科学的根拠に基づくマネジメントの実践』誠信書房。

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。


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