働き方改革によって変化したワーク・ライフ・バランス ~そのメリットと実践方法についてもご紹介~

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近年、社会人ならだれもが口にするようになった『ワーク・ライフ・バランス』という言葉ですが、徐々に考え方も変わりつつあるようです。本記事では、アフターコロナに突入した現在のワーク・ライフ・バランスの考え方やメリットをしっかり把握し、具体的な取り組み方を考察していきます。改めて『ワーク・ライフ・バランス』という言葉の意味を見直す機会にしていただければ幸いです。



目次

  1. ワーク・ライフ・バランスとは?
    1. 1-1 間違った「ワーク・ライフ・バランス」の考え方
  2. ワーク・ライフ・バランスが求められてきた背景
    1. 2-1 仕事と生活が両立しにくい現実
    2. 2-2 働き方の二極化等
    3. 2-3 共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識
    4. 2-4 地域社会の変貌
    5. 2-5 多様な働き方の模索
    6. 2-6 多様な働き方を可能とさせる取り組みの必要性
    7. 2-7 コストではなく明日への投資という意識づけ
  3. ワーク・ライフ・バランスで期待される効果 
  4. ワーク・ライフ・バランスを実現するために求められる「働き方改革」の推進
  5. ワーク・ライフ・バランスのメリット5つ
    1. 5-1 メリット① 女性従業員の定着
    2. 5-2 メリット② 優秀な人材の定着
    3. 5-3 メリット③ 社員のモチベーション向上
    4. 5-4 メリット④ 労働生産性の改善
    5. 5-5 メリット⑤ 優良企業のイメージ醸成
  6. ワーク・ライフ・バランス実現へ向けた取り組み方法
    1. 6-1 所定外労働時間の削減
    2. 6-2 年次有給休暇・育児休暇などの休暇取得促進
    3. 6-3 勤務制度の見直し・整備
    4. 6-4 福利厚生サービスの導入
    5. 6-5 人事評価制度の見直し
  7. まとめ

         

1.ワーク・ライフ・バランスとは?



一般的にワーク・ライフ・バランスとは、「仕事と私生活との両立・調和」という意味で、働き方改革の一つとして使われており、特に子育てをしている女性支援や働きながら家族の介護をしている人などにフォーカスがあてられることが多いようです。しかし実は国が「ワーク・ライフ・バランス」の考え方を定義しており、年齢や性別に関係なく、全ての働く人に関係するものとしています。

 

本章では国が定めた「ワーク・ライフ・バランス」の正しい考え方を解説します。

   

1-1 間違った「ワーク・ライフ・バランス」の考え方

「ワーク・ライフ・バランス」と聞くと、多くの方は充実したプライベートの時間を重要視し、心身ともに健康である状態でイキイキと仕事ができるようなこと、育児や介護で大変な時は会社がサポートし、仕事の調整をして働きやすい環境を作ってくれることなどを連想する方も多いことでしょう。その認識は個人ごとに考え方が大きく異なっているかもしれません。

 

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉には国が定めた「憲章」や「定義」というものが存在します。内閣府 男女共同参画局は、数ある政策の中のひとつに『「仕事と生活の調和」推進サイト~ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて~』という項目を掲げ、『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章』として以下のように明記しています。

◆仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章◆

我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。

引用元:内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」


さらに、以下の通り「仕事と生活の調和とは(定義)」にて、具体的なワーク・ライフ・バランスの在り方を定義しています。


◆仕事と生活の調和とは(定義)◆

「憲章」では、仕事と生活の調和が実現した社会は、
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
とされ、具体的には

(1)就労による経済的自立が可能な社会
経済的自立を必要とする者、とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

(2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

(3)多様な働き方・生き方が選択できる社会
性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

とされています。

引用元:https://wwwa.cao.go.jp/wlb/towa/definition.html">内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室「仕事と生活の調和とは(定義)」

 

これらの「憲章」や「定義」に記載されているように、ワーク・ライフ・バランスには「経済的な自立」や「自己啓発や地域活動への参加」「自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会」なども盛り込まれていることを、改めて認識しておく必要があります。


             

2.ワーク・ライフ・バランスが求められてきた背景



国(内閣府)が政策としてワーク・ライフ・バランスを定義し「憲章」まで策定してきた背景には、次の各項目の課題が要因であるとしています。

          

2-1 仕事と生活が両立しにくい現実

現実の社会は、以下のように仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られます。

仕事は暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすと同時に、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがいや喜びは倍増するとしています。
          

        

2-2 働き方の二極化等

国内外における企業間競争の激化や、長期的な経済の低迷や産業構造の変化により、生活の不安を抱える正社員以外の労働者が大幅に増加する一方、正社員の労働時間は高止まりしたままであることが挙げられています。他方、利益の低迷や生産性向上が困難などの理由から、働き方の見直しに取り組むことが難しい企業も存在しています。
 

          

2-3 共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識

かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的であったため、現在もこのような働き方の考えが根強く多く残っています。しかし今日では、女性の社会参加等が進み、勤労者世帯の過半数が共働き世帯になる等、人々の生き方が多様化しているにもかかわらず、働き方や子育て支援などの社会的基盤はこのような変化に対応していません。

   

2-4 地域社会の変貌

過去の働き方の認識が現状への変化に対応していない社会では、結婚や子育てに関する人々の希望が実現しにくいものになっています。個人、家族、地域が抱える諸問題が少子化の大きな要因であり、それが人口減少にも繋がっているといえます。また人口減少時代では、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるのにもかかわらず、現状では多様な人材を活かすことができていません。

 

2-5 多様な働き方の模索

働く人々の中には、様々な職業経験を通して積極的に自らのキャリアを向上させようとする人や、仕事と生活の双方を充実させようとする人、地域活動への参加等をより重視する人など、多様な働き方が模索されています。

また、仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることも求められています。ディーセント・ワークの推進は、就業を促進し、自立支援につなげるという観点からも必要となっています。

さらにここでは、労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場環境を実現するために、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策等に取り組むことが重要としています。


2-6 多様な働き方を可能とさせる取り組みの必要性

国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、日本の社会を持続可能で確かなものとする取り組みが必要とされています。

働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度を改革して、個々人の生き方や子育て期、中高年期などの人生の各段階に応じて、多様な働き方の選択を可能とする「仕事と生活の調和」を実現しなければなりません。


2-7 コストではなく明日への投資という意識づけ

「仕事と生活の調和」の実現に向けた取り組みは、人口減少時代において、有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものと考えられています。特に人材確保が困難な中小企業において、その取組の利点は大きく、業務の見直し等により生産性向上につなげることも可能となります。このことは、企業にとって「コスト」ではなく「明日への投資」として積極的にとらえるべきとされています。

 

出典元:内閣府 男女共同参画局「仕事と生活の調和」推進サイト 『参考資料』
 
            

3.ワーク・ライフ・バランスで期待される効果



ワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」です。本章では、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会になった場合、具体的にどのような効果が期待できるのかを説明します。



就労による経済的自立が可能となる

とくに若者が経済的に自立可能な働き方が可能となり、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できるようになります。それにより前向きにいきいきと働くことも可能となります。

健康で豊かな生活のための時間が確保できるようになる

働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てるようになり、心身ともに豊かな生活が期待されます。

③多様な働き方・生き方が選択できるようになる

性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供され、子育てや親の介護が必要な時期など、個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択できるようになり、さらに公正な処遇の確保が期待されています。

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4.ワーク・ライフ・バランスを実現するために求められる「働き方改革」の推進



国がワーク・ライフ・バランスの定義をし、浸透・実現に向け様々な施策に取り組んでいることは理解できたことでしょう。しかし、そのワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業における「働き方改革」の推進が必須となってきます。本章では内閣府がまとめた、企業がワーク・ライフ・バランスの実現に向けて「働き方改革」を推進するための”総論”を紹介します。

【総論】

①経営トップがリーダーシップを発揮し、職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現等に取り組む。
②労使で仕事と生活の調和の実現に向けた目標を定めて、これに計画的に取り組み、点検する仕組みを作り、着実に実行する。
③労使で働き方を見直し、業務の進め方・内容の見直しや個人の能力向上等によって、時間当たり生産性の向上に努める。企業は、雇用管理制度や人事評価制度の改革に努める。働く者も、職場の一員として、自らの働き方を見直し、時間制約の中でメリハリのある働き方に努める。
④管理職は率先して職場風土改革に取り組み、働く者も職場の一員としてこれに努める。
⑤経営者、管理職、働く者は、自らの企業内のみならず、関連企業や取引先の仕事と生活の調和にも配慮する。
⑥働く者は、将来を見据えた自己啓発・能力開発に取り組み、企業はその取組を支援する。
⑦労使団体等は連携して、民間主導の仕事と生活の調和に向けた気運の醸成などを行う。
⑧労使は、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ、労働契約を締結し、又は変更すべきものとする。

出典元:内閣府 男女共同参画局「仕事と生活の調和」推進サイト 『参考資料』


ここでは、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業のトップや管理職がリーダーシップを発揮し、労使とともに意識改革や柔軟な働き方に取り組み、従業員の未来に向けての能力開発を支援していくことが、たいへん重要なことであると謳っています。



5.ワーク・ライフ・バランスのメリット5つ

 

ワーク・ライフ・バランスを実現することにより、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのか、5つのポイントを解説します。



          

5-1 メリット① 女性従業員の定着

ワーク・ライフ・バランスの充実により、女性従業員が出産後でも就業を継続できる働きやすい環境であれば、女性従業員の定着や離職率の低下が期待できます。以下の「女性の離職理由」からもわかるように、ライフステージの変化に応じて、労働時間や休日などの労働条件を見直し、企業側が積極的に理解・サポートすることは、女性従業員の退職や転職を防ぎ、定着に向けて非常に重要なポイントとなります。

「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、 「女性の離職理由」の割合は以下のようになっています。

・「結婚・子育て、介護などのため」5.8%(男性は1.3%、女性の方が4.5%多い)
・「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」10.1%(男性は8.0%、女性の方が2.1%多い)

出典元:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」
  
ワーク・ライフ・バランスを実現することは、多様な働き方を支援する制度が定着するということでもあり、多様な働き方を選択できる従業員は、「育児・介護と仕事が両立しやすくなる」「出産してもキャリアを継続できる」という安心感から、会社に定着してもらうことが可能となります。
         

5-2 メリット② 優秀な人材の定着

現在、日本は少子高齢化や人口減少が急速に進み、優秀な従業員の離職阻止、優秀な人材の採用などは、どの企業にとってたいへん重要な課題となっています。企業は働きやすい環境づくりをし、雇用管理制度や人事評価制度の改革に努め、働く者が将来を見据えた自己啓発・能力開発に取り組めるよう支援することで、従業員の離職を防ぐことも可能となり、優秀な人材の採用や人手不足の解消にも期待できるようになります。


給料がどんなに高くても、ブラックな職場環境では人も定着せず、優秀な人材も集まらなくなり、採用コストも高くなってしまうのです。

           

5-3 メリット③ 社員のモチベーション向上

内閣府の「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書概要」によると以下の結果が出ています。

◆管理職からみた両立支援の職場への影響◆

・両立支援制度の利用は、総合的には、職場に「プラスの影響の方が大きい」。具体的には、「仕事の進め方について見直すきっかけ」になっている。
・両立支援制度がプラスになっている職場の特徴は、「残業が少ない」「継続就業が一般的」「チームで連携」「仕事は時間でなく成果で評価」「理解ある管理職」など。

◆男女の働き方とワーク・ライフ・バランス◆

・子育てする人が働きやすく、女性が男性と同じように昇進・昇格機会のある職場環境は、既婚・独身や男女を問わず「仕事の満足度」「仕事への意欲」「ワーク・ライフ・バランス実現度」によい影響。
・既婚独身問わず男女共に、ワーク・ライフ・バランスが図れていると感じている人の方が仕事への意欲が高い。
・家事・育児の責任が女性にかかっている中で、子育てしながら働いている女性は、効率を強く意識している。

引用元:内閣府「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書概要」


これらの結果を見ると、仕事と子育ての両立支援やライフステージに応じてワーク・ライフ・バランスの取り組みは、すべての男女にとって、仕事への意欲や満足を高める(モチベーション向上)という意味で大変重要なものとなっています。また、モチベーションがアップすると、仕事の効率性が意識され、職場にもメリットをもたらし、仕事の進め方の見直しやサポートする上長の能力向上等にもつながるという相乗効果をもたらします。

 

ワーク・ライフ・バランスが実現できている状態とは、「仕事以外の時間が充実している状態」であり、趣味の時間や家族との時間など充実したプライベートを過ごすことです。また、仕事とプライベートの区別をとることで、オンとオフのメリハリがつき、時間や気持ちに余裕を持って仕事に臨めるため、結果的に仕事へのモチベーションもアップします。

 

さらに、自己啓発やスキルアップ、ボランティア活動や地域活動から得た経験から得た気付きがヒントになり、新たなイノベーションの創出にもつながることも期待できます。つまり「ワーク・ライフ・バランス」は長時間労働の見直しとともに、業務内容の改善が可能となり、モチベーションの向上が期待できるようになります。
    

5-4 メリット④ 労働生産性の改善

内閣府の「男女の働き方と仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する調査結果概要 ~少子化と男女共同参画に関する意識調査より~」では、ワーク・ライフ・バランスを充実させると、従業員の仕事に対する意欲が高まり、結果として、組織全体の生産性アップにもつながることが期待できるとされています。

 

ワーク・ライフ・バランスの充実により、従業員の離職の低下が見込め、採用・育成にかかる費用を削減でき、さらにモチベーション向上により生産性がアップし、人件費を抑えることが可能となる、という良い循環が生まれるということです。

 

ブラックといわれる企業では、ストレスや睡眠不足で集中力が下がることが多く、十分なパフォーマンスは出せずに、生産性は下がっていきます。最悪な場合は、メンタルを崩して仕事ができない状態になってしまい、残った社員にさらなる負担を強いることも考えられます。このような時こそ、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指して、従業員たちが短い時間で高いパフォーマンスを発揮できる取り組みを始めることが重要となります。

出典元:内閣府「男女の働き方と仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する調査結果概要 ~少子化と男女共同参画に関する意識調査より~」

          

5-5 メリット⑤ 優良企業のイメージ醸成

近年では「ワーク・ライフ・バランス」の考え方は、大企業のみならず中小企業を含め日本の社会全体に浸透してきました。よってワーク・ライフ・バランスを重視し取り組みをしている企業は、社外からも「働きやすい会社」「従業員を大事にする会社」という評価を受けやすく、「良い会社」というブランドイメージの向上に繋がっていきます。さらに、CSR(企業の社会的責任)の観点からも、企業価値が向上するようになります。

 

このような「ワーク・ライフ・バランス」に取り組む企業で働く従業員は、空いた時間にスキルアップのためのセミナー、ボランティアや地域活動など、業務外の活動への参加もしやすくなります。外での活動が活発になっていくと、さまざまな人との交流が増え「〇〇会社で働く社員は、地域に貢献している人が多い」などという評判が広がり、イメージアップに繋がっていきます。


        

6.ワーク・ライフ・バランス実現へ向けた取り組み方法



ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて取り組むには、まずは経営トップがリーダーシップを発揮し、職場風土を改革するための意識改革や、柔軟な働き方の実現に向けて先陣を切らなければ、何も始まりません。本章では、経営層が主体となって動くことを前提に、ワーク・ライフ・バランスの取り組み方法を解説します。

          

6-1 所定外労働時間の削減

いつもと同じ業務量の労働時間を削減することは大変なことかもしれません。ただ、普段の業務を処理するための労働時間が所定労働時間を大きく上回り、長時間労働となってしまう場合、それは効率化の妨げとなり、従業員のやる気までなくなってしまいます。先ずは、仕事の配分に問題がないかなど残業の原因の分析をし、以下の取り組みを行うことが重要です。

 

  

6-2 年次有給休暇・育児休暇などの休暇取得促進

長時間労働を強いられている従業員は、押しなべて休日出勤をしたり年次有給休暇を取得できなかったりするケースが多く見受けられます。また、近年は男性の育児休暇の取得についても取得率がなかなか上がらないという情報が多く入ってきています。各種休暇制度の取得促進に向けては、以下の取り組みをすることで、取得率の向上が期待されます。
 


6-3 勤務制度の見直し・整備

ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、各種勤務制度を整備することは不可欠です。さまざまな事情を抱えた人が、働きやすくなるような勤務制度は積極的に取り入れていかなければなりません。特に自社内でその新制度を必要としている人がどのくらいいるのかを、事前にしっかりと状況把握して導入するのが理想です。導入時には、従業員に新制度について周知と運用内容を理解してもらうことも重要です。以下が主な勤務制度の参考例となります。 


6-4 福利厚生サービスの導入

ワーク・ライフ・バランスを実現するために福利厚生制度を検討されている場合、まず「福利厚生パッケージサービス」を導入するのが、手軽に迅速に始められる良い手段となるでしょう。「福利厚生パッケージサービス」は育児、介護、自己開発、健康、スポーツ、旅行・レジャーや宿泊施設などがパッケージなっており、全てのメニューに割引や特典の付くラインナップとなっています。

 

特に休暇取得を推奨しても、休日にやることが見つからない従業員に対して、映画の割引メニューや安く利用できる宿泊施設の紹介、英会話やスポーツジムなどの利用促進をするのも良いでしょう。また、仕事で疲れている従業員は、サービスを利用してベビーシッターや単発・時間単位で利用できる一次保育施設に子供を預けて、割引料金でマッサージを利用するなど、疲れを癒す時間に当てることも可能です。

 

企業主導の福利厚生制度を打ち出したい場合は、「カフェテリアプラン(選択型福利厚生制度)」の導入を検討することもおすすめです。カフェテリアプランとは、企業が従業員に一定のポイント(補助金)を付与し、企業が設定したメニューの枠内で従業員が自由に選択・利用できるものです。

 

これは企業の特定メニュー(育児・介護など)の設定や利用可能ポイント数の設定により、従業員に対して企業のメッセージを伝えることが可能となります。また従業員ニーズにより、随時メニューの追加・見直しが可能となるため、従業員の自主性・自立性が向上し、従業員は個人ごとに自身に適したワーク・ライフ・バランスの実現を考えるきっかけともなります。

 

充実した福利厚生を目指すなら「WELBOX」

介護・育児・自己啓発・健康増進・旅行やエンターテイメントなど、多彩なメニューがパッケージとなっている福利厚生サービスです。
従業員のライフスタイル・ライフステージに応じて、メニューを選択しご利用いただくことが可能です。

6-5 人事評価制度の見直し

内閣府の『「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報について』によると、上司は長時間労働や有休取得状況についてどう評価すると感じるか、について以下の結果が出ています。

・労働時間が長い人ほど、上司が長時間残業の人に対して「頑張っている人」「責任感が強い」などポジティブなイメージをもっていると回答。
・上司が有給休暇を取得する人に対して、「仕事より自分の時間を優先する」「仕事が少ない」などネガティブなイメージを持っていると回答。
・労働時間が長い人ほど、職場の雰囲気について「仕事の手順などは自分で工夫しやすい」と回答する人が少なくなる。
・正社員が長時間労働の削減に効果的と考える取組は、「計画的な残業禁止日の設定」、「上司の声かけ」、「短時間で質の高い仕事を評価」、「担当がいなくとも他の人が代替できる体制」など
・このうち、職場で取り組まれているとの回答の少ないものは、「短時間で質の高い仕事を評価」、「担当がいなくとも他の人が代替できる体制づくり」。

出典元:内閣府『「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報について』

 

これらの結果を見ると、企業の中には、今なお「長時間労働」や「企業に尽くすこと」を美徳とする意識が根強く残っていることがわかります。そのため、時間内で業務を終わらせ極力残業をしない従業員や、有給休暇を積極的に消化している従業員を、正当に評価しないケースもあると考えられます。

 

このような感情や主観による不当な評価を減らし、人事評価のばらつきをなくすために、従業員を正当に評価する取り組みが重要となります。そのような取組を行うことで、不公平感を感じている従業員にも適正な評価がされるようになり、安心感を与え円滑に職場を回すことが可能となります。


        

7.まとめ



改めて『ワーク・ライフ・バランス』の正しい意味と本質を理解できたでしょうか。ワーク・ライフ・バランスは単に子育てや家族の介護のためのものと思い込んでいた方も、自身の働き方にも関係があるものと認識し、会社のさまざまな制度を見直してみるのも良いでしょう。

 

まずは、会社の福利厚生制度が全ての従業員にとって、必要性の高いものとなっているか見直すのもいいかもしれません。子育て世代にはベビーシッターや一時保育の施設が充実しているか、若い世代には将来に向けた自己開発の講座を提供できているか、中高年に対しては老後に向けての金融講座や体力増進支援が整っているか、全世代が休日にリフレッシュできるレジャー施設や旅行支援などが整っているかなどの見直しです。

 

イーウェルでは各企業に適したワーク・ライフ・バランスを、パッケージサービス「WELBOX」や「カフェテリアプラン」などを通じてコンサルタントが支援しております。先ずは以下より資料をダウンロードしてご検討ください。

選択型福利厚生「カフェテリアプラン」

企業が従業員に一定のポイント(補助枠) を付与し、従業員は企業ごとに設計されたメニューの範囲内で自由に選び、 利用できる選択型の福利厚生制度です。



著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

    

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