「人間ドックを福利厚生として導入したいけど、税務上の取り扱いはどうなるの?」
「どういう条件なら経費として認められるのかわからない」
従業員の健康維持・促進は、企業の生産性向上と持続的成長に直結する重要課題です。その中でも人間ドックの費用補助は、従業員の健康増進と早期発見・早期治療による長期的な医療費削減効果が見込める福利厚生として注目されています。
本記事では、人間ドックを福利厚生として導入する際の税務上の取り扱いや条件、注意点について、人事担当者向けに詳しく解説します。適切に制度を設計することで、従業員の健康管理を支援しながら、企業としても税務上のメリットを受けるための方法を紹介します。
目次
まず結論から言えば、一定の条件を満たせば人間ドックは福利厚生費として経費計上できます。国税庁によれば、会社が従業員に対して支給する人間ドック等の費用は、一般的な健康診断を超える部分であっても、一定の要件を満たせば「福利厚生費」として取り扱うことが認められています。
国税庁の質疑応答事例集では、「使用者が従業員の健康管理上の必要から、人間ドック等の受診機会を提供し、その費用を負担した場合には、その支出した費用の額は、福利厚生費として取り扱うことができる」と明記されています。
※参考:人間ドックの費用負担|国税庁
人間ドックを福利厚生として提供するメリットには、以下のような点が挙げられます。
健康経営銘柄選定や健康経営優良法人認定制度など、健康経営への取り組みが評価される社会的な流れの中で、人間ドック補助は効果的な施策の一つとして位置づけられています。
※参考:ACTION!健康経営|健康経営優良法人認定制度
企業が人間ドックを福利厚生として効率的に提供する方法として、福利厚生パッケージサービスやカフェテリアプランの活用が注目されています。こうしたサービスを使えば、人間ドックをはじめとするさまざまな福利厚生サービスをまとめて管理・提供できるため、企業側も従業員側も便利に利用できます。
福利厚生パッケージサービスを通じた人間ドック提供の主なメリットとして、以下の点が挙げられます。
特にカフェテリアプランでは、従業員自身が付与されたポイント内で人間ドックを含む福利厚生メニューを自由に選択できるため、従業員それぞれの健康ニーズや関心に合わせた健康管理を支援できます。
たとえば、イーウェルの提供する「WELBOX」では、全国の提携医療機関から人間ドックや各種健診を選択でき、予約から結果管理までをサポートするサービスを展開しています。また「カフェテリアプラン」では、従業員は付与されたポイントで自分に合った健診コースを選択でき、企業側は福利厚生の利用状況や効果を簡単に把握できるため、多様な年齢層や健康状態の従業員を抱える企業において効果的です。
人間ドックの費用を福利厚生費として経費計上するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
福利厚生費として認められるための最も重要な条件は、特定の従業員だけでなく、すべての従業員に対して平等に受診の機会が与えられていることです。
国税庁からは、「役員や特定の使用人のみを対象とするものでなく、使用人一般を対象とする場合」という条件が示されています。つまり、以下のような点に注意する必要があります。
会社が人間ドック費用の実費を直接負担していることも、福利厚生費として認められるための重要な条件です。
経費計上の方法としては、以下のようなパターンが考えられます。
いずれの場合も、支払いの証憑(領収書等)をきちんと保管しておくことが重要です。また、会社が負担する金額に上限を設ける場合も、その上限額までは福利厚生費として認められます。
厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によれば、福利厚生制度として健康診断・人間ドックの費用補助を行っている企業は約78.5%にのぼり、法定健診を超える健康管理支援が広く普及していることがわかります。
人間ドックの費用を福利厚生費として経費計上するためには、その価格や検査内容が常識的な範囲内であることも重要です。
一般的な人間ドックの費用は、基本的な検査項目で3万円~5万円程度、オプション検査を含めても10万円前後までが一般的と言われています。これを大きく超える高額な人間ドックや、必要性が乏しいオプション検査などは、税務上問題となる可能性があります。
国税庁の通達では具体的な金額の上限は示されていませんが、「通常必要と認められる部分」という考え方が示されており、過度に高額なものは「通常必要」の範囲を超えると判断される可能性があります。
人間ドックの費用であっても、以下のようなケースでは福利厚生費として経費計上できない、または給与課税の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
いずれの場合も、支払いの証憑(領収書等)をきちんと保管しておくことが重要です。また、会社が負担する金額に上限を設ける場合も、その上限額までは福利厚生費として認められます。
役員や一部の幹部社員のみを対象に人間ドックを提供する場合は、福利厚生費としての経費計上が認められず、給与として課税される可能性が高くなります。
国税庁の通達では、「役員や特定の使用人のみを対象とするもの」は給与等として取り扱うとされています。このような場合、費用は以下のように処理されることになります。
従業員の健康管理という福利厚生本来の目的を考えれば、役職に関わらず広く機会を提供することが望ましいと言えるでしょう。役員のみを対象とした人間ドック費用は税務調査で指摘されるリスクが高まりますので注意が必要です。
基本的な人間ドックに加えて提供される特別なオプション検査については、その内容によっては福利厚生費として認められない場合があります。
注意すべきオプション検査の例
項目 | 具体例 | 注意点 |
健康維持・管理と直接関係のない検査 | ・美容目的のオプション ・健康状態の把握に必要とは言えない高額検査 |
健康管理目的から逸脱するため、福利厚生費として認められない可能性が高い |
過度に高額なオプション検査 | ・一般的な人間ドックの費用を大きく上回るもの ・医学的必要性と比較して過剰な検査 |
「通常必要と認められる部分」を超えると判断され、給与課税の対象となるリスクがある |
個人的な趣味・嗜好に基づくオプション | ・個人的な希望による追加検査 ・会社の健康管理方針と関連性が薄いもの |
福利厚生の本来の目的から外れるため、給与として扱われる可能性がある |
これらのオプション検査を会社が負担する場合、福利厚生費として認められずに給与課税の対象となるリスクがあります。人間ドックのプランを選定する際は、従業員の健康管理に必要な基本的な検査項目を中心に検討することが望ましいでしょう。
基本的な健康診断の範囲を超える検査でも、企業の健康経営の方針に基づいて合理的に選定されたものであれば、福利厚生費として認められる可能性は高いと言えます。たとえば、脳ドックやがん検診などは、疾病の早期発見という福利厚生の本来の目的に合致するものと考えられます。
人間ドックは、一定の条件を満たせば福利厚生費として経費計上できる有効な健康支援策です。すべての従業員に平等に機会を提供し、会社が実費を負担し、常識的な範囲内の検査内容であれば、税務上も問題なく福利厚生として取り扱うことができます。
一方で、役員や特定の社員のみを対象とする場合や、過度に高額なオプション検査を含む場合は、給与課税の対象となる可能性があるため注意が必要です。制度設計の際は、国税庁の見解を踏まえつつ、健康経営の観点から従業員全体の健康増進につながる内容を検討しましょう。
福利厚生パッケージサービスやカフェテリアプランの活用は、人間ドック補助を含む健康支援策を効率的に提供する有効な手段です。イーウェルの「WELBOX」や「カフェテリアプラン」などを導入することで、従業員の多様なニーズに応えながら、企業の事務負担も軽減できます。
従業員の健康は企業の持続的成長の基盤です。適切に設計された人間ドック補助制度の導入を通じて、従業員の健康増進と企業の健康経営を両立させましょう。
介護・育児・自己啓発・健康増進・旅行やエンターテイメントなど、多彩なメニューがパッケージとなっている福利厚生サービスです。
従業員のライフスタイル・ライフステージに応じて、メニューを選択しご利用いただくことが可能です。