医学博士 日本医師会認定産業医
米山 裕子
今年は酷暑ですね。熱中症で救急搬送される方も多くなっているようです。
そこで、今回は熱中症に関して、まとめてみました。
熱中症は子供や高齢者だけでなく、職域でも発生します。
熱中症について正しい知識を身につけ、熱中症による健康被害を防ぎましょう。
<職域における熱中症発生の現状>
下のグラフは職場における熱中症による死傷者数の推移です。
暑い年には熱中症で亡くなる場合があるという現状が分かります。
業種別に分けると、以下のように建設業・製造業が多く、全体の5割がこれらの業種で発生していること分かります。
<熱中症の基礎知識>
職域でも熱中症は多く見られることが分かったところで、熱中症に関する基礎知識のおさらいをしていきましょう。
厚生労働省のホームページでは、「熱中症」は、「高温多湿な環境に長くいることで、徐々に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもあります。」とされています。
熱中症を引き起こす条件を考えると、比較的分かりやすいかと思います。
その条件は「環境」と「からだ」と「行動」の3つです。
・「環境」の要因は、気温が高い、湿度が高い、風が弱いなどがあります。
・「からだ」の要因は二日酔いや寝不足、下痢や低栄養状態などがあります。
・「行動」の要因は、激しい労働や運動によって体内に著しい熱が生じたり、暑い環境に体が十分に対応できないことなどがあります。
<熱中症の症状>
以下のような症状が一つでも出たら、熱中症の可能性を考えましょう。
①めまい、立ちくらみ
②手足のしびれ
③筋肉のこむら返り
④体のだるさや吐き気、頭痛
⑤汗のかき方がおかしい(ふいてもふいても汗がでる、あるいはまったくかかない)
⑥体温が高い、皮膚が赤く乾いている
重症になると返事がおかしい、意識消失、けいれん、からだが熱いといった症状が出ます。
<個人でできる熱中症予防>
どんな人でも熱中症にかかる危険性がありますが、正しい予防法を知り、普段から気を付けることで防ぐことができます。
①給水:喉が渇いていなくてもこまめに水分を取りましょう。特にスポーツドリンクなどの塩分や糖分を含む飲料は水分の吸収がスムーズにできます。ただし、医師から水分や塩分の制限をされている場合は、よく相談の上、その指示に従いましょう。
②休憩:適宜休憩を挟み、連続作業時間を短くするようにしましょう。
③声かけ:作業中の「大丈夫?」「休憩しよう!」「水飲めよ!」などの声かけが重要です。
④前日のアルコールの飲みすぎ:アルコールの飲みすぎには要注意です。
⑤睡眠不足に注意:ぐっすり眠ることで翌日の熱中症を予防しましょう。体調不良の時には休むようにしましょう。
⑥朝食はきちんと食べよう:人は寝ている間に汗をかくなどにより約500ml以上の水分を失うと言われています。
朝食をとれば水分・塩分を効率的にとることができます。
<企業でできる熱中症対策>
①WBGT値の低減:WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperatureとは、熱中症を予防することを目的に作られた指標で、湿度、日射輻射(ふくしゃ)などの熱環境、気温の3つを取り入れた指標です。
②休憩場所の整備
③熱中症の教育:労働者に熱中症の正しい知識を伝えましょう。
④労働前の体調チェック:働くまえに体調のチェックをするようにしましょう。チェックリストを作っても良いですね。
⑤熱中症になった場合の緊急連絡網の作成および周知
労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ、病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知しておきましょう。
<熱中症になったら>
万が一、熱中症を疑わせる症状が現われた場合は、涼しい場所で身体を冷し、水分及び塩分の摂取等を行いましょう。必要に応じ救急隊を要請し、医師の診察を受けさせてください。
<参考文献>
厚生労働省 熱中症関連情報https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html
環境省 熱中症予防情報サイト
http://www.wbgt.env.go.jp/
職場における熱中症による死傷災害の発生状況https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000125407.pdf
職場における熱中症の予防についてhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei33/
米山 裕子
<略歴>
東京女子医科大学医学部卒
昭和大学大学院医学研究科修了
医学博士 日本医師会認定産業医
「一人一人の人生をできる限り後悔しないようにするための
お手伝い」をすることを目標に日々産業医として邁進している
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