まさき産業医事務所
代表 真崎 竜邦
「お疲れ様です」「お疲れ様でした」という言葉、会社の中でよく聞く言葉ですよね。あなたの職場でもこの言葉は飛び交っているでしょうか?
この言葉ですが、今年7月、フジテレビの「ヨルタモリ」という番組内で、「『お疲れ様』というのは、元来、目上の者が目下の者にいう言葉。これをわかっていない(子役が多い)んですね」というタモリの発言がきっかけで、大きな注目を集めることになりました。
確かに日本語研究の専門家も同様の趣旨のことを言っており、厳密に言えばその通りなのだろうと思います。一方で、ビジネスマナー講習などでは「ご苦労様です」は失礼であり、「お疲れ様です」を使うようにと指導しているところもあるため、話がややこしくなっています。
ただ、本来の意味や使い方はどうであれ、実際に、これだけ「お疲れ様です」が頻用されているのは、この言葉が挨拶として定着してしまっているからなのだろうと思います。むしろ、本来は相手をねぎらう言葉であったがはずの言葉が、挨拶として定着してしまうほど多用されたのは何故か、と考えてみることの方が重要だろうと思っています。
もちろん相手の状態を慮って、気遣いを示す日本人特有の精神、文化的背景もあるのだろうと思いますが、とりわけ社内で使われるこの言葉の根底には(仕事は忙しいはずだから)「相手は疲れているだろう」「疲れていて当然」という意識があるのは否定できないと思います。
日本人の過重労働、過労死が問題となって久しく、国も含め様々な対策が打たれています。しかしながら昨年度、脳・心臓疾患で労災申請をした方は763人(前年度比21人減)、労災認定されたのが277人(同29人減)、うつ病などのメンタルヘルス不調を発症したとして労災申請したのは1,456人(前年度比47人増)、労災認定されたのは497人(同61人増)と全体では増加の一途であり、過重労働ばかりが原因ではないとはいえ、問題が解決に向かっている様子は一向に見えてきません。
もちろん仕事に一生懸命取り組むことが悪いわけではありません。しかし、疲れていて当然、むしろ疲れているように見えなければ仕事をしていないと判断されてしまうような社内風土では、労働者個々の心身の健康を保つことは困難になってしまい、ひいては会社全体の活気を奪っていくのではないかと考えます。
皆様の会社内で使われている「お疲れ様です」は、単なる挨拶でしょうか。それとも、無意識のうちに言外の意味を含めてしまっているのでしょうか?今一度考えていただければ幸いです。その結果がどちらであれ、労働者、事業者、ともに活気ある元気な職場を目指していただければと思っています。
真崎 竜邦
<略歴>
H11年3月
福井医科大学 医学部 医学科 卒業
以後、大阪府立病院、京都第二赤十字病院、公立丹南病院、福井大学病院、福井赤十字病院、福井県立病院 にて消化器内科医として勤務
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