「円安の影響で外国人労働者獲得が困難になりつつあるのではないか」
「外国人労働者を戦力として現場を回しているが、今後の人材確保戦略を見直すべきか悩んでいる」
円安が進行する中、外国人労働者の「日本離れ」への懸念が高まっています。
厚生労働省の最新データ(2025年10月時点)では、外国人労働者数は過去最多を更新しており、現時点で急激な減少は起きていません。ただし、就労意欲の低下傾向は確実に進んでおり、企業として中長期的な対策を講じる必要性が高まっています。
本記事では、円安が外国人労働者に与える影響の実態から、受け入れのメリット・デメリット、そして企業が今取るべき具体的な対策まで詳しく解説します。
目次
現時点での情報で言えば、外国人労働者数はここしばらく減少していません。むしろ過去最多を更新し続けています。
しかし、円安の長期化により今後減少に転じるリスクは十分にあり、企業は早めの対策を講じる必要があります。
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況の届出状況」によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は約257万人に達し、前年比11.7%増加しました。この数字だけを見れば「日本離れ」は起きていないように見えます。
しかし、その内訳を見ると状況は単純ではありません。ベトナムからの労働者の増加率が鈍化する一方、ミャンマーやインドネシアからの労働者が急増しています。これは日本の魅力が相対的に低下し、従来の送り出し国から「選ばれなくなりつつある」兆候とも読み取れます。
また、マイナビグローバルの調査では、外国人労働者の日本での就労意欲が低下傾向にあることが報告されています。一方で、日本在留外国人の多くは「今後も日本で働きたい」と回答しており、その割合自体は増加しています。
しかし、労働者数が増えているにもかかわらず、「日本で働きたい」という強い意欲を持つ人材は確実に減少しているのです。
外国人労働者にとって、日本で働くメリットは以前ほど大きくなくなっています。その背景には複数の要因があります。
円安の最大の影響は、母国への送金額が目減りすることです。
外国人労働者の多くは、母国の家族を経済的に支えるためもあって日本で働いています。しかし、たとえば月給20万円を稼いでも、1ドル=150円を超える円安下では約1,330ドルにしかなりません。数年前の1ドル=110円時代と比べると、同じ給料でも価値が3割近く下がっている計算になります。
加えて、母国の経済成長も見逃せません。ベトナムをはじめとするアジア諸国では最低賃金が年々上昇しており、日本との賃金格差は確実に縮まっています。かつては「日本で働けば母国の何倍も稼げる」という状況でしたが、今ではその差が小さくなり、わざわざ日本に来るメリットが薄れているのです。
韓国や台湾も外国人労働者の獲得に力を入れており、日本は人材獲得競争で後れをとり始めています。韓国では賃金水準が日本を上回る場面も出てきており、「アジアで働くなら韓国の方がいい」という選択をする人も増えています。
日本の労働環境に対する不満も、日本離れを加速させる要因です。
長時間労働や休暇の取りにくさ、職場でのコミュニケーションの難しさなど、日本特有の働き方が外国人労働者にとってストレスになるケースは少なくありません。
特に技能実習制度をめぐっては、低賃金労働や人権問題がたびたび報道され、国連などからも「強制労働だ」「人権が守られていない」などと厳しく批判されてきました。転職が制限される仕組みへの不満も大きく、「日本は外国人を搾取している」というイメージが母国で広まっている面もあります。批判を受けて「育成就労制度」への移行(予定)など仕組みが改善されつつあるとはいえ、こうした評判はSNSを通じて瞬時に拡散されるため、日本で働くことへのネガティブなイメージが定着しつつあります。
もちろんすべての雇用者がそうではありませんが、一部の悪質な事例が日本全体の評判を下げてしまっているのが現状です。
日本語の習得難易度の高さも、日本で働くうえでのハードルを上げています。英語が通じにくい日本では、ある程度の日本語能力がなければ仕事の選択肢が限られます。
また、日本特有の事情として、文字体系の複雑さも、外国人にとって負担とされています。ひらがな、ローマ字、同じ漢字でも複数の読み方がある点、さらにカタカナの存在など、基本的な文字体系を大まかに習得していないと、単純な指示のメモさえ読むのに苦労してしまいます。
日本語能力試験(JLPT)のN2やN3レベルに到達するには相当な学習時間が必要であり、この負担を理由に日本での就労をためらう人も少なくないでしょう。
英語圏や、英語でビジネスが成立するシンガポールなどと比べると、日本で働くためのハードルは高いと言わざるを得ません。言語の問題は職場でのコミュニケーション不全にもつながり、孤独感やストレスの要因となることもあります。
外国人労働者にとって日本で就労する魅力が薄れてきている一方で、外国人労働者を受け入れることには企業にとって多くのメリットがあります。
少子高齢化が進む日本において、外国人労働者は貴重な労働力です。特に製造業、建設業、介護、飲食・宿泊業など、慢性的な人手不足に悩む業界では、外国人労働者なしでは事業が成り立たないケースも増えています。
日本人だけでは採用が難しい職種でも、外国人労働者を受け入れることで必要な人員を確保できる場合があります。地方では若者の流出が進んでおり、外国人労働者が経済を支える重要な存在になっている地域も少なくありません。また、都市部でも人手不足が顕著になる中、外国人労働者によって支えられているサービスは多岐にわたります。
外国人労働者の雇用に関連して、さまざまな助成金制度を活用できます。たとえば、外国人労働者の職場定着を支援するための研修費用や、日本語教育にかかる費用の一部を助成する制度があります。
また、地方自治体によっては独自の支援制度を設けているケースもあります。こうした制度を活用することで、受け入れにかかるコスト負担を軽減しながら、外国人労働者の定着を図ることができます。
外国人労働者を採用することで、海外市場への展開がスムーズになる可能性があります。母国の言語や文化に精通した人材がいれば、現地との商談や市場調査において大きな強みになります。
また、社内に多様な視点が入ることで、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなるというメリットもあります。グローバル化が進む中で、多様な人材を受け入れる体制を整えることは、企業の競争力強化にもつながるでしょう。
メリットがある一方で、受け入れに伴う課題やリスクも存在します。
文化的背景や価値観の違い、そしてその違いに対する理解不足から、職場でトラブルが発生することがあります。たとえば、時間に対する感覚、報告・連絡・相談の習慣、上下関係の捉え方などは国によって大きく異なります。
日本では当たり前とされることが外国人労働者には理解しづらかったり、逆に外国人労働者の行動が日本人社員に違和感を与えたりするケースもあります。もちろん日本人労働者間でも意識の違いはありますが、日本ではそうした違いを明文化せず、職場風土で何となく理解していることも多いでしょう。そんな「何となく」で回してきてしまったところに、理解の根本が異なる労働者が入れば、当然摩擦が生まれます。こうした摩擦を放置すると、職場の雰囲気悪化や離職につながりかねません。
特に、日本の企業内では今まで話題に上がことの少なかった宗教についても、強いタブーや厳格に定められた作法など、その宗教を信仰する人にとっては譲れないことがあります。
トラブルが起きる前に対策することもなかなか難しいですが、普段からの姿勢として、多方面の意見をすり合わせ、慎重に理解を深めていく必要があるでしょう。
外国人労働者の雇用には、在留資格の確認や各種届出など、日本人採用にはない手続きが必要です。在留カードの確認、ハローワークへの届出、雇用契約書の多言語対応など、人事・労務担当者の業務負担は確実に増加します。
また、在留資格によって従事できる業務が制限されるため、採用時には資格と業務内容の適合性を慎重に確認する必要があります。手続きに不備があると不法就労助長罪に問われるリスクもあり、法令遵守の観点からも注意が必要です。
外国人労働者は、条件の良い職場があれば転職する傾向が比較的強いとされています。特に現在の特定技能制度では一定の条件下で転職が認められており、より待遇の良い企業へ移ってしまうリスクがあります。
2021年厚生労働省の「第1回『外国人雇用対策の在り方に関する検討会』」資料で見ると、外国人労働者の離職率は、外国人労働者数に対して2020年上半期で15.4%(産業計)、全雇用者の離職率については同じ期間で8.5%と出ていますから、業種によって差はありますが、日本全体の平均よりも倍近く高い値を示しています。
参考:第1回「外国人雇用対策の在り方に関する検討会(オンライン開催)」資料/【資料2-4】労働移動分析(厚生労働省、2021年3月)
せっかく採用・教育にコストをかけても、短期間で離職されてしまっては投資を回収できません。定着率を高めるためには、給与だけでなく職場環境や将来のキャリアパスを含めた総合的な魅力づくりが求められます。
円安の長期化や国際的な人材獲得競争の激化を考えると、外国人労働者に過度に依存する体制はリスクが高いと言えます。しかし、世界がグローバル化していく中で、日本だけ鎖国できるわけもなく、また少子高齢化が顕著な我が国はそれでは回りません。
国内外を問わず開かれたオープンな社会にしていくために、企業が今から取り組むべき対策を整理しました。
外国人労働者の減少リスクに備える確実な方法は、会社全体として定着率を高めるとともに、採用力を強化することです。日本人、外国人に関わらず、なるべく長く安定して働いてもらい、継続的に人材を確保し続けることができれば、円安など外部環境が悪化した際に一定数の労働者が離職しても、経営を維持することができます。
そのために有効なのが、福利厚生制度の充実による企業の魅力向上です。
人手不足が深刻な業界では、給与水準だけで他社と差別化することが難しくなっています。住宅手当や食事補助、健康支援、資産形成支援など、従業員の生活を多面的にサポートする福利厚生制度は、求職者にとって企業を選ぶ重要な判断材料になります。
福利厚生の充実は既存社員の定着率向上にも効果があります。離職率が下がれば採用コストの削減にもつながり、結果として人材確保の好循環を生み出すことができるでしょう。
あわせて読みたい
外国人労働者の定着を図るうえで、日本人と同等の待遇を保証することは最低条件です。「外国人だから」という理由で給与や待遇に差をつけることは、モチベーション低下や早期離職の原因になります。
同一労働・同一賃金の観点からも、国籍による不当な差別は許されません。給与水準はもちろん、昇進・昇格の機会、福利厚生の利用範囲なども含めて、公平な処遇を心がける必要があります。
公正な待遇は外国人労働者からの信頼獲得につながり、口コミによる採用力強化にも寄与します。「あの会社は外国人も大切にしてくれる」という評判が広まれば、人材獲得競争で優位に立てるでしょう。
外国人労働者が長く働き続けられる環境づくりも重要です。具体的には、日本語学習支援、生活面でのサポート(住居探し、銀行口座開設など)、職場でのコミュニケーション改善などが挙げられます。
日本人社員に対する異文化理解研修も効果的です。外国人労働者を「安い労働力」としてではなく、ともに働く仲間として受け入れる意識を社内に浸透させることで、職場の雰囲気は大きく変わります。
また、特定技能2号への移行支援や、将来的なキャリアパスの提示も定着率向上に有効です。「この会社で頑張れば将来が開ける」という展望を示すことで、外国人労働者のモチベーションと忠誠心を高めることができます。
円安の影響で外国人労働者の「日本離れ」が懸念される中、企業は「安い労働力」として外国人労働者に依存するのではなく、共に働く会社の一員と強く認識し、人材戦略を再構築する必要があります。
現時点で外国人労働者数は過去最多を更新していますが、就労意欲の低下傾向や国際的な人材獲得競争の激化を考えると、今後減少に転じるリスクは十分にあります。母国との賃金格差の縮小、労働環境への不満、言語の壁など、日本で働くメリットが薄れている現状は直視すべきでしょう。
外国人労働者を受け入れるメリットは依然として大きいものの、文化の違いによるトラブルや手続きの煩雑さ、早期離職リスクといったデメリットも存在します。これらを踏まえたうえで、採用力強化と定着支援の両面から、日本人労働者にも外国人労働者にも対策を講じることが重要です。
特に福利厚生制度の充実は、日本人・外国人を問わず人材の採用と定着に効果を発揮します。給与だけでは差別化しにくい状況だからこそ、従業員の生活を多面的に支援する福利厚生制度の価値が高まっています。
福利厚生制度の見直しや充実をご検討の場合は、福利厚生のトータルソリューションを提供するイーウェルにご相談ください。パッケージ型福利厚生サービス「WELBOX」により、日本人・外国人を問わず従業員満足度を高め、人材の採用・定着を支援する包括的なソリューションをご提案いたします。
介護・育児・自己啓発・健康増進・旅行やエンターテイメントなど、多彩なメニューがパッケージとなっている福利厚生サービスです。充実した福利厚生を目指すなら「WELBOX」
従業員のライフスタイル・ライフステージに応じて、メニューを選択しご利用いただくことが可能です。