「毎年賃上げを続けているのに、従業員の生活が楽になっている実感がない」
「物価高に合わせて給与を上げたいが、これ以上の賃上げは経営を圧迫してしまう」
こうした悩みを抱える企業が増えています。物価上昇に追いつくための賃上げが、企業にとって重荷となりつつある現状は「賃上げ疲れ」と呼ばれ、特に中小企業を中心に深刻な問題となっています。
本記事では、賃上げ疲れの実態と企業への影響、そして賃上げだけに頼らない従業員支援の選択肢について解説します。
目次
「賃上げ疲れ」とは、物価高や人手不足を背景に、毎年のように求められる賃上げに企業が疲弊している状態を指します。
近年、春闘では連合が5%以上の賃上げを毎年のように目標に掲げ、大企業を中心に高水準の賃上げが続いています。2024年の春闘では平均賃上げ率が5%を超え、30年ぶりの高水準を記録しました。
しかし、この数字は主に大企業の実績です。エデンレッドジャパンの調査によると、7割以上の企業が賃上げ圧力を感じており、約8割が「賃上げ疲れ」を実感していると回答しています。賃上げを続けなければ人材が流出する、しかし賃上げを続ければ経営が立ち行かなくなる──多くの企業がこのジレンマに直面しているのです。
賃上げ疲れの根本的な原因は、継続的な物価高騰にあります。
2022年以降、円安や原材料価格の高騰により、日本の物価は上昇を続けています。従業員の生活を守るためには賃上げが必要ですが、企業側もコスト増に苦しんでいる状況です。しかし、日本全体の経済が上向きではなく、実質賃金が下がり続けている現在、原材料などの増加コストをそのまま商品価格に乗せることは価格競争の観点からできません。結果、売上や利益が伸びないまま人件費だけが増えていけば、経営を圧迫するのは当然のことでしょう。
特に厳しい立場にあるのが中小企業です。東京商工リサーチの調査によれば、2025年度の賃上げ実施率は大企業が92.6%に対し、中小企業は80.9%と格差が広がっています。さらに深刻なのは、中小企業の実施率が2年連続で低下している点です。体力のない企業から、賃上げの継続が難しくなっているのです。
「賃上げは大企業の話」と思われがちですが、実際には大企業でも大規模なリストラが頻繁に報じられています。賃上げ疲れは中小企業から顕在化しているものの、いずれ大企業にも波及する可能性のある構造的な問題といえるでしょう。
賃上げ疲れを放置すると、人件費の高騰にとどまらず、人材流出や採用難といった深刻な問題につながります。
物価高に賃上げが追いつかない状況が続けば、従業員の不満は高まり、離職リスクが増大します。ここでは、賃上げ疲れが引き起こす3つの課題を見ていきましょう。
賃上げを続ける企業では、人件費の増加が利益を圧迫しています。
エデンレッドジャパンの調査では、賃上げ疲れの影響として68.7%の企業が「企業収益の圧迫」を挙げています。さらに33.1%が「投資の抑制」を選択しており、将来への成長投資を後回しにせざるを得ない状況が見えてきます。
業績が伴わないまま人件費だけが膨らめば、設備投資や人材育成への資金が削られ、中長期的な競争力低下を招くリスクがあります。
賃上げが追いつかなければ、従業員は「もっと条件のいい会社」へ転職してしまいます。
東京商工リサーチによれば、2025年の人手不足倒産は過去最多の397件を記録しました。そのうち「従業員退職」を要因とする倒産は110件で、前年から54.9%も増加しています。
大企業と中小企業の賃金格差が広がる中、より高い給与を求めて人材が流動しています。「人が辞めるから賃上げする、でも賃上げし続ける余裕はない」という板挟みの状態に、多くの企業が追い込まれているのです。
賃金水準で大企業に追いつけなければ、新たな人材の獲得も困難になります。
「初任給30万円時代」という言葉がメディアをにぎわせていますが、帝国データバンクの調査によると、実際に初任給30万円以上を出せる企業はごく一部に限られます。85%以上の企業は初任給25万円未満にとどまっているのが実情です。
また、初任給と既存従業員の給与水準が逆転する現象も、一部で問題になっています。給与水準が上がっていない先輩社員が、自分より高い給与をもらう新入社員に仕事を教えなければならないことで不満を溜め込み、モチベーションやエンゲージメントの低下につながりかねないというのも、原因としては会社全体で賃上げができていないことにあります。
現在は、新入社員に限らず、中堅社員でも人手は足りていません。
採用市場で給与面の競争力がなければ、求める人材を確保できず、既存従業員への負担が増し、さらに離職を招く。こうした悪循環に陥るリスクがあります。
賃上げに取り組む企業を後押しするため、厚生労働省をはじめとする行政機関がさまざまな支援策を用意しています。
代表的なものとして、以下の制度が挙げられます。
こうした助成金を活用することで、賃上げの原資確保や生産性向上を両立させることが可能です。まずは自社が対象となる制度がないか、厚生労働省のホームページで確認してみることをおすすめします。
物価高に苦しむ従業員を支える方法は、直接の賃上げだけではありません。
近年注目されているのが、福利厚生の充実による「給与以外での賃上げ」という考え方です。給与を直接上げるのではなく、従業員の生活費負担を軽減する福利厚生を提供することで、実質的な可処分所得の向上を図るアプローチです。
たとえば食事補助や住宅手当、通勤手当の増額といった施策は、従業員の日常的な出費を直接カバーできます。こうした福利厚生による支援は、給与のように所得税・住民税の課税対象とならないケースが多く、同じ企業負担額でも従業員の手元に残る金額が大きくなる点もメリットです。
賃上げを全従業員が納得する水準まで続けることは、体力のない企業にとってかなり難しいチャレンジです。だからこそ、給与以外の方法で従業員の生活を支える選択肢を持っておくことが重要なのです。福利厚生の見直しは、賃上げ疲れを乗り越えるための有効な一手といえるでしょう。
賃上げ疲れは、物価高と人手不足が同時に進行する現代において、多くの企業が直面する構造的な課題です。
本記事で解説したように、賃上げを続けられなければ人材流出や採用難を招き、続ければ経営を圧迫してしまいます。企業はこのジレンマの中で最適なバランスを模索しています。
そんななか、賃上げだけに頼らない従業員の生活支援なども有効な選択肢のひとつです。行政の支援策を活用しながら、福利厚生の充実という「給与以外での賃上げ」で従業員の生活を支えることで、賃上げ疲れから脱却する道が開けます。
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