世界の働き方を比較!労働時間や男女差、気になる日本のランキングは?

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2022年11月にイーロン・マスク氏がTwitter社のCEOに就任し、社員に対して「週80時間の勤務に備える必要がある」とスピーチしたという報道は、記憶に新しいニュースではないでしょうか。

 

日本においては、労働時間は原則として「休憩時間を除いて週に40時間、1日8時間」と労働基準法第32条で定められていますが、皆さんは今回のマスク氏の発言をどのように感じられましたか? 本記事では、労働時間や男女の働き方の格差などについて、世界各国の中で日本はどのような位置にいるのかなど、現状を見ていきたいと思います。

 

目次

  1. 日本の労働時間はやっぱり長いのか?
  2. 世界の長時間労働の事情
    1. 2-1 週49時間以上働く労働者の割合〔男女計〕
    2. 2-2 週49時間以上働く労働者の割合〔男性のみ〕
    3. 2-3 週49時間以上働く労働者の割合〔女性のみ〕
  3. 男女の働き方の違いにも注目
  4. 世界の労働時間 国別ランキング
  5. まとめ

1.日本の労働時間はやっぱり長いのか?



日本人は働きすぎだ、労働時間が長すぎる、などというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。実際は次のようなデータ結果が出ています。

 

OECDがまとめた「2021年_年間労働時間(2022年7月20日データ更新)」の調査結果によると、日本の全就業者平均の1人当たり年間実労働時間は1,607時間となりました。1年間の勤務日数を250日とすると、1日の労働時間が6.4時間という結果となります。日本人は思ったより労働時間が短いと感じられたのではないでしょうか。

 

ただし、この年間実労働時間には、フルタイム、パートタイム、年間の一時期のみ働く労働者の正規労働時間、有給および無給の時間外労働、追加就業の労働時間が含まれます。また、休暇などの労働しなかった時間は含まないため、フルタイム労働者だけで統計を算出すれば、労働時間はもっと長くなることでしょう。

 

世界労働時間の平均は1,716時間となっており、世界の中での日本の順位は46か国中19位となっています。なんと、世界の平均より100時間ほど少ない数値となっています。この結果により、日本は世界の中でも労働時間が特に長いわけではなく、思っていたより短いことが認識できたのではないでしょうか。世界の労働時間の順位については、「4.章世界の労働時間 国別ランキング」で解説します。
 

出典元:OECD『労働時間』


2.世界の長時間労働の事情



独立行政法人労働政策研究・研修機構では、「国際労働比較」というデータブックを毎年発行しています。そこでは、週49時間以上働く世界の労働者の割合を、男女計、男性のみ、女性のみの3つに分けてデータを出しているので、詳しく見ていきましょう。

2-1  週49時間以上働く労働者の割合〔男女計〕

先ず男女合わせた週49時間以上働く労働者の割合を見ていきましょう。日本だけを見てみると、2010年の割合が23.1%だったのに対して、2020年は15.0%に減少しています。8%以上も長時間労働者が減少しており、これは日本における働き方改革推進のたまものといえるでしょう。

 

諸外国では、タイが39.5%から17.1%と10年で22%以上の減少、韓国が37.6%から19.5%と18%以上減少しています。その他の国は経年で計測が取れていない国もありますが、この10年で大きく長時間労働が減少した国は少ないようです。

 

直近の2020年だけを見ると、アメリカは14.2%で日本の15.0%と大きく変わりません。相対的に見てみると、ヨーロッパの諸外国が長時間労働の割合が低く、東南アジアの諸外国がまだ若干多く、南米や北米がその中間に位置しているようです。

≪週49時間以上働く労働者の割合 男女計≫



引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構『国際労働比較2022』227頁


2-2 週49時間以上働く労働者の割合〔男性のみ〕

続いて男性だけの割合を見てみましょう。先ずは男女計の数値と比較すると、どの国も長時間労働者の割合が顕著に大きいです。特に2020年のヨーロッパ諸国は、男女計の割合が10%未満の国がほとんどでしたが、男性だけになると、10%を超えるかそれに近い割合にまで増えています。

 

また、韓国とタイが2010年は40%を超える高い割合だったのに対して、2020年は両国とも半減したのは驚く数字です。逆に2010年と2020年の10年間の推移がほとんど変わらなかったのは、アメリカ、イギリスなどで、特に働き方に対する意識に変化はなかったようです。

 

≪週49時間以上働く労働者の割合 男≫

引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構『国際労働比較2022』228頁

2-3 週49時間以上働く労働者の割合〔女性のみ〕

最後に女性のみの長時間労働の割合を見てみましょう。どの国も男性だけの割合と比較すると女性だけの割合の方が顕著に短いと感じることでしょう。

2010年と2020年の経年で比較してみると、日本は11.1%から6.9%へと減少しており、さらに韓国、タイは著しく半分以下に減少しています。全体を見てみると他の国はさほど大きく減少している国は少ないようにも感じますが、10年前までは女性の長時間労働の割合が40%近くを占める国もありました。

≪週49時間以上働く労働者の割合 女≫


引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構『国際労働比較2022』229頁



3.男女の働き方の違いにも注目



前章にて男性と女性との長時間労働の割合には、大きなひらきがあることに触れましたが、その大きな要因として、女性はパートタイム、年間の一時期のみ働く労働者の割合が多いなど、働き方自体に違いがあることが読み取れます。

 

日本においては、女性は正規雇用者として採用されにくいという問題だけではなく、意図的に被扶養者を選択する人がまだまだ多く存在するためです。具体的には、パートで働く主婦にとって扶養に影響する年収の壁というものが存在し、働きながら夫の扶養に入り、さらに税制面での控除を受けるために年収を調整する女性がいるということです。

 

特に「103万円の壁」というのは、夫の扶養だけではなく、妻自身のパート代に所得税がかかり始める年収を指します。103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。現在は、103万円を超える人のために配偶者特別控除が設けられ、妻の年収150万円まで満額で受けられるようになりました。しかし、いまだに103万円を意識して働いている人は多いようです。

 

「女性はパートタイム労働が多い」という働き方の男女差については、日本だけに当てはまることではなく、世界的にパートタイム労働者における女性比率は大きいようです。The World Bankのデータでは、日本は52.9%(2020年)、ドイツ59.0%(2021年)、アメリカ31.3%(2021年)、イギリス56.2%(2019年)、フランス47.9%(2021年)、韓国34.7%(2021年)となっています。

出典元:The World Bank「Part time employment, female (% of total female employment)」

 

ただし、日本と世界で違いもあります。男女の賃金差について比較したデータにて、2022年時点の日本はOECD46か国中4位という結果になっています。その賃金差は男性の賃金の約22.1%に当たるとされており、アメリカでは男女の賃金差は16.9%、最も格差の少ないのベルギーではわずか1.2%となっています。

≪世界の男女間賃金格差≫



引用元:OECD 『男女間賃金格差』

 

つまり日本は世界的に賃金の面で男女差が大きいこととなります。パートタイム労働者における女性比率は世界的にだいたい同じであるのに、なぜ賃金差に大きな違いがあるのでしょうか。パートタイム労働者の比率が男女差の理由であれば、ほかの国でも日本と同様な男女賃金差が生まれるはずです。考えられることは、日本は正社員同士、パートタイム同士のあいだで、男女に賃金差があると考えられます。ここで昇給や昇進など、日本における女性の働き方の課題が見えてきます。


4.世界の労働時間 国別ランキング

OECD統計をベースにした世界主要国の労働時間の国際比較統計・ランキングでは、各国の全就業者平均の1人当たり年間実労働時間と国別順位を掲載しています。就業者とは給与所得者である雇用者、自営業者を含む全就業者を指しています。

 

労働時間とは、原則的に定時・残業、有給・無給にかかわらず実際に生産活動に従事していた時間となっており、休暇・有給休暇、昼食時間、OJT以外のトレーニング時間は含まれていません。

 

≪2021年 年間労働時間 国別ランキング≫

順位 国名 時間(h)/年
1 メキシコ 2,128
2 コスタリカ 2,073
3 コロンビア 1,964
4 チリ 1,916
5 韓国 1,915
6 マルタ 1,882
7 ロシア 1,874
8 ギリシャ 1,872
9 ルーマニア 1,838
10 クロアチア 1,835
11 ポーランド 1,830
12 米国 1,791
13 アイルランド 1,775
14 エストニア 1,767
15 チェコ 1,753
16 イスラエル 1,753
17 キプロス 1,745
18 ニュージーランド 1,730
19 ハンガリー 1,697
20 オーストラリア 1,694
21 カナダ 1,685
22 イタリア 1,669
23 ポルトガル 1,649
24 スペイン 1,641
25 リトアニア 1,620
26 ブルガリア 1,619
27 日本 1,607
28 ラトビア 1,601
29 スロベニア 1,596
30 スロバキア 1,583
31 トルコ 1,572
32 スイス 1,533
33 フィンランド 1,518
34 イギリス 1,497
35 ベルギー 1,493
36 フランス 1,490
37 スウェーデン 1,444
38 オーストリア 1,442
39 アイスランド 1,433
40 ノルウェー 1,427
41 オランダ 1,417
42 ルクセンブルク 1,382
43 デンマーク 1,363
44 ドイツ 1,349
世界平均時間 1,716


出典元:OECD『労働時間』

 

このランキングをグラフにしたのが以下の通りです。本記事「1. 日本の労働時間はやっぱり長いのか?」でも解説しましたが、日本の労働時間は世界平均よりも短いことが分かります。アメリカの方が日本より200時間も多い実態を見ると、アメリカ人は日本人よりもよく働き、日本は働き方改革が進んでいるという見方もできるのではないでしょうか。

 

シエスタ制度で有名なスペインは、陽気な国民が多く労働よりプライベートを重視しているイメージもありますが、実は日本よりも労働時間は長く、その他ヨーロッパの一部の諸国も労働時間が若干長いのが分かります。ただ、ヨーロッパの中でも勤勉で良く働くというイメージの強いドイツの労働時間が、最も低いのも意外と思われる方も多いのではないでしょうか。。

 

≪2021年 年間労働時間(全就業者)≫



引用元:OECD『労働時間』


5.まとめ



世界の労働時間ランキングと男女の働き方について見てきましたが、皆さんはどのように感じられましたか?気になる日本は、労働時間が世界平均より少ないこと、日本は女性のパートタイムの割合が世界と比較して変わりがないのに、賃金格差が大きいことなど、改めて日本の現状を認識したことと思います。

 

2022年の最新世界GDPランキングでは、日本はアメリカ、中国についで3位となっています。ただ、現在日常生活を送る中で、豊かさというものを感じている人はどれほどいるでしょうか。世界の経済が不透明な今だからこそ、少子高齢化のなかで生産性を上げ、労働者が男女関係なく公平に収入を得られる仕組み作りをしていくことが重要です。

 

日本も労働時間が世界平均より短いから良い国である、などという考えよりも働き方の中身を重視する必要があります。企業も働き方改革をさらに推進し、男女の格差をなくして、従業員のウェルビーイング度を高めていかなければなりません。

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

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